二度引退のプロスポーツ選手、“就職”で得た気づき「狭い世界でチヤホヤされていた」
スポーツ選手ならば、いつかは必ず「引退」を迎えるものだ。しかしながら、競技に人生を捧げてきたぶん、ネックとなるのが一般企業での社会人経験。その後の就職活動など、多くの人が「セカンドキャリア問題」に直面することとなる。
そんななかで、スポーツ選手として活動しながら、一般企業で正社員としても働き、社会人経験を積み上げていく「デュアルキャリア」という考え方が昨今は注目されつつある。
氷上の格闘技といわれるアイスホッケー。2019年に発足した「横浜GRITS(グリッツ)」は、男子プロアイスホッケー界で唯一、デュアルキャリアをコンセプトに掲げ、採用しているチームだ。昨年末には、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」元監督のアレックス・ラミレス氏が共同代表に就任したことでも話題を呼んだ。
「横浜GRITS」初代キャプテンを務めた菊池秀治氏(36歳)は、2017年に一度は引退し、会社員として働きながら選手に復帰。立ち上げ時からチームに貢献した。そして、チームが軌道にのり始めた今シーズンをもって、二度目の引退を決断した。
約30年間、アイスホッケー選手として活動してきたが、マイナースポーツゆえの苦悩や葛藤、デュアルキャリアのメリット、そしてアイスホッケーの未来について話を聞いた。
——今シーズンで引退しましたが、率直にどんな気持ちですか?
菊池:選手を引退するのは2回目ですし、1回目の引退のときに“自分のためだけ”のアイスホッケー選手としては、やり切った感がありました。
「横浜GRITS」で選手として復帰したときは、“チームのために”といったら重いですが、チームが軌道にのるまでが僕の仕事だと思っていましたので。今季の試合を通して他の選手が頼もしく感じましたし、このままだったらチームとして大丈夫だなと。ですので、気持ちはすっきりしています。
——「デュアルキャリア」を取り入れたチームとそうではないチームがあります。アイスホッケーだけに集中するチームと選手と会社員を両立するチームを経験した菊池選手にとって、どういうところが違うと感じましたか?
菊池:プロチームでは、スポーツをしている時間が2時間、トレーニングを2時間くらいするので、結局4時間で仕事が終わるんです。もちろん、体のケアとかトレーナーにマッサージをしてもらうこともありますし、怪我をしたらリハビリもします。それでも、5〜6時間で勤務が終了します。
「横浜GRITS」では、8時から9時30分までアイスホッケーの練習をし、その後は通常の勤務ですので、「選手としての時間」が大きな違いだと思っています。
ちなみに、各々が勤務時間の合間にウエイトトレーニングや陸上トレーニングを行っています。勤務形態は通常の社員と一緒なので、朝練習をしているぶんの勤務時間は後ろ倒しになります。これが、デュアルキャリアでの働き方です。
スポーツ選手と会社員を両立させる「デュアルキャリア」
将来のために時間を有効活用する


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