更新日:2023年04月07日 18:09
お金

1000兆円も借金がある日本は、破綻寸前なの?元日銀副総裁がわかりやすく解説

債務不履行の危機に瀕したギリシャはどうだった?

 ’08年に起きたリーマン・ショック後、財政危機に襲われたギリシャは債務不履行の危機に瀕しました。ギリシャは通貨にユーロを使っていますが、自らユーロを発行することはできないため、第一の手段は使えませんでした。  大不況下で国民の反対が強く、課税権を行使することもできなかった。さらに、外貨建てで国債を発行しており、外貨で国債費を払う必要がありましたが、外貨不足で、第三の手段も使えませんでした。

日本の国債金利は“超低い”

 日本はいざとなれば、いずれの手段も使えますが、そもそもほとんどの人は財政破綻のリスクを感じていません。それは、国債金利が“超低い”ことに表れています。  1年と2年満期の金利はマイナスで、10年満期でも0.43%(’23年3月10日現在)です。0.43%だと、預けた預金の価値が倍になるのに167年もかかります(「72」を%の値で割ると、価値が倍になる年数がわかり、これを「72の法則」といいます)。  167年前とは黒船が浦賀沖に現れた2年後です。その頃のお金の価値が現在になって、ようやく倍になる低さです。  この超低金利は日銀の金融政策が寄与していますが、そもそもの原因は、日本の家計と企業の貯蓄が大きく、その貯蓄が金融機関を通じて国債で運用されているからです。  低インフレ・低成長の日本では、民間部門に資金需要がないため、政府の資金需要である国債は最も安全で債務不履行の心配がない資産なのです。
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岩田の“異次元”処方せん
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東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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