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非正規社員の差別待遇を改善するにはどうしたらいい?元日銀副総裁が解説

 私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

非正規社員と正社員の差別をなくすには、どうしたらいい?

経済オンチの治し方

日本銀行

 日本には「正社員」という社員が存在します。しかし、英米や欧州諸国には存在しません。雇用期間の異なる社員が存在するだけで、賃金などについて差別的扱いを受けることはありません。  そこで、日本における非正規社員の歴史を見ておきましょう。  日本では戦後、終身雇用制という日本独特の雇用慣行が確立しました。この雇用慣行では、社員は企業の要請する残業、異動、転勤など、基本的に何でも受け入れる義務があります。その対価が①不況期にも解雇されない安定性であり、②勤続年数とともに上がる賃金(年功序列型賃金)であり、③欧米諸国にはない、長期勤続するほど増加する退職金です。  このような、企業に全面的に帰属する雇用形態を「メンバーシップ型雇用」といいます(対になるのが「ジョブ型雇用」)。  ところが、1990年代以降になると、景気の低迷が長期化し、企業がメンバーシップ型雇用を維持することが困難になりました。そこで採用されたのが、“メンバーシップを与えない”雇用形態です。
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差別待遇を改善するには?
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東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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