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日銀が7月に決めた「YCCの柔軟化」ってなに?元日銀副総裁がわかりやすく解説

私は経済学者として国内外の大学で教鞭をとったりした後、’13~’18年には日本銀行副総裁として金融政策の立案にも携わりました。そこで、感じたのは「経済を知れば、生活はもっと豊かになる」ということ。そのお手伝いができればと思い、『週刊SPA!』で経済のカラクリをわかりやすく発信していきたいと考えました。

日銀が7月に決めた「YCCの柔軟化」ってなに?

経済オンチの治し方

日本銀行

 日銀は7月に「長短金利操作」の運用を柔軟化しました。長短金利操作は短期金利(民間銀行が日銀に預けている預金金利)をマイナス0.1%、10年満期の国債金利を一定範囲に固定する金融政策で、YCC(イールドカーブ・コントロール)とも呼ばれます。  この“YCC柔軟化”とは、①長期金利(10年国債金利)の変動幅を±0.5%程度で維持することを「目途」とし、②指値オペ(日銀による無制限の国債買い入れ)の水準を0.5%から1%に引き上げたことを指しています。  1%の金利での指値オペとは、「日銀が10年物国債を1%の金利で無制限に買う」ことを意味します。この1%指値オペを、以下では、「伝家の宝刀」と呼びましょう。  YCC柔軟化を、「金融引き締めに転換した」と誤解するエコノミストが多いようです。しかし、伝家の宝刀が抜かれるのは、国債市場で10年物国債金利が0.5%を超えて1%に向かって上昇すると、日銀が予想する場合だけです。
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YCCとリスクマネジメント
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東京大学大学院経済研究科博士課程退学。上智大学名誉教授、オーストラリア国立大学客員研究員などを経て、’13年に日本銀行副総裁に就任。’18年3月まで務め、日本のデフレ脱却に取り組んだ経済学の第一人者。経済の入門書や『「日本型格差社会」からの脱却』(光文社)、『自由な社会をつくる経済学』(読書人)など著書多数

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