更新日:2023年04月06日 13:23
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道端ジェシカさんがハマっていた“カエル毒”治療。怪しいスピに傾倒するセレブの謎

「デトックス」という概念の信憑性

 まず「デトックス」というのは、「溜まった毒素や老廃物を排出する」などとして美容やダイエットの売り文句ですっかり浸透している言葉だが、実際の医学用語ではない。何かをすれば人間の体から不要なものだけが出ていってくれるなんてムシのいい話はなく、国内外の多くの医師らがその幻想について語っている。ジェシカさんがハマっている今回のものは、毒を摂取して起こる正常な身体の反応に過ぎないだろう。  そして、オーラやらチャクラうんぬんのワードが出ているように、これは単なるスピった行動の果てのニセ医学の賞賛と言える。過去に某スピ系の教祖的人物の投稿でも見たことがあった。違う種類の蛙の毒だったと思うが、その人は儀式の後に「メッセージが降りてきた」そうだ。  その地域の伝統や思想であれば、すべてを非科学的と目くじらを立てても仕方ない。  ただ、精神的充足を求めるがゆえにいちいち毒を使ってしんどい思いをする必要があるのか理解に苦しむ。夢の万能薬かのように言われても、劇的な治癒に期待できるものでもないだろう。ヒーリングだのスキャニングだのが必要なほど体の状態が心配なら、日本で普通に病院に行ったほうがいい。  例えば傷病に草を塗って煙でいぶし「交霊術」までも施すような、きちんとした医療体制が敷かれない場所で伝わってきた、信仰の延長であることは考慮されたい。  そういった所に出向いてまで何らかを体験しようとするのは、海外セレブたちの暇潰しのようなもの。  それが高じた末に、新たな快楽や高揚感を得たくて薬に手を出して道を踏み外すとしたら実に愚かなことだ。もしも後で「デトックス」できるなどと考えるのなら救えない。

なぜ自然派スピからケミカルのMDMAに?

 しかし今回の逮捕には大きな矛盾もある。蛙の毒を摂り入れるほどの自然派スピに傾倒していた人が、バキバキの化学薬品から合成された麻薬であるMDMAに手を出すだろうか。自然由来の非合法なものなら分からなくもない。容疑を否認しているという報道もあり、捜査の進展が待たれる。  繰り返しになるが、スピリチュアル自体を否定はしないし、その趣味が全て違法薬物などに繋がってしまうとも思わない。ただ、筆者が多くのスピ好きな人のSNSなどを観察してきた限り、「不思議なもの、神秘的なもの」を追いかけ、海外ツアーなどでお金さえ払えば誰でも体験できることを得難い修業を積んだかのように勘違いするケースは多い。非科学的なものを押し付けるイタい人になり、下手にハマると一般社会と乖離してそれまでの人間関係も壊れることになる。  薬とは違って合法の範囲でも、著名人が安易にそうした趣味を見せびらかしていたとしても、それが自分にとって本当にいいものかどうかは慎重に考えてもらいたい。<文/黒猫ドラネコ>
九州出身。30代後半のライター。怪しいスピリチュアルや陰謀論、信者ビジネスなどを観察し潜入取材も敢行する。超甘党。 Twitter:@kurodoraneko15
黒猫ドラネコのニュースレター【トンデモ観察記】を定期配信
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