更新日:2023年05月22日 16:21
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“中核派女子大生”が「広島サミット粉砕」を掲げる理由

平和記念公園が完全封鎖されたのは…

矢嶋尋 矢嶋さんの弁によれば、政府が追い込まれていることを、如実に示すのが広島サミット開催中に原爆ドームを含め平和記念公園がフェンスで完全封鎖されたことだという。 「G7の首脳が平和公園に来るのは19日の午前中だけなんです。なのに期間中ずっと閉鎖されることになっています。広島サミットの最中にどんどん人が集まって、東京五輪や国葬の時のような声をあげられることを、恐れているわけです」  そうした情勢分析を語った上で、矢嶋さんは今の心境を、こうまとめた。 「弾圧されるほど、敵を倒せる日は近いなと思っています」

そうはいっても「粉砕」できるのかという問いには

 とはいえ、仲間が次々と逮捕され次は自分も……という怯えはないのだろうか。それを訊ねると、少し考えた矢嶋さんは確信に満ちた感じで、語り始めた。 「活動を続ける中で、いつか弾圧は来るのだろうなとは思っていました。今は、本当に戦争に向かってのプロセスが始まっていく中で、特高警察が(戦争に反対する)『はだしのゲン』のお父さんを、捕まえたのと同じ状況が来ているんだなと感じています」  しかし、ここでどうしても気になるのは矢嶋さんたちの掲げる「サミット粉砕」というキーワードである。「粉砕」を掲げているとはいえ、主な活動はデモと集会である。今ではネットで意味もわからず「過激派」という言葉が一人歩きしている気がするが、筆者はギリギリ、中核派が現在よりも過激だった時代をリアルタイムで知っている。  筆者が小学生の頃に国鉄分割民営化反対闘争で、総武線の浅草橋駅を焼き討ちにしたり、1986年の東京サミットに反対し迎賓館にロケット弾を打ち込み緊迫したニュース映像が流れていたのを記憶している。そこまでしてもなお、状況は覆られなかったことを顧みると、とても、今回も粉砕できるとは思えないのだが……。 「重要なのは実力で粉砕しようとする意志です。体制内の左翼は広島サミットそのものには反対せず、広島の現実を世界に伝える機会だとか主張しています。でも、私たちは、これは帝国主義者の戦争会議で絶対に止めるしかないと考えています。だから、その姿勢を明らかにするために粉砕を掲げているんです」
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現在の情勢は「既に戦争が始まっている」状態
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ルポライター。1975年岡山県に生まれる。県立金川高等学校を卒業後、上京。立正大学文学部史学科卒業。東京大学情報学環教育部修了。ルポライターとして様々な媒体に寄稿。著書に『コミックばかり読まないで』『これでいいのか岡山』

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