仕事

「“バックレ”よりも安心感」年間1万件以上の相談、“退職代行”利用する新入社員のホンネ

 多くの企業が新入社員を迎え入れる春以降、新卒はもちろん、転職してきた人たちで職場の空気は一変する。だが、業務内容や職場環境、対人関係など、人により理由はさまざまだが、せっかく就職したのにすぐに退職してしまう人もいる
新入社員

※写真はイメージです(Photo by Adobe Stock)

 また、なかには「会社を辞めたいが、なかなか言い出せない」ことで悩む人も少なくない。上司に咎められるのが怖い、もう会社には顔を出したくない……そう思っても、なかなか「退職の意思表示」ができず、悶々と仕事せざるを得ないケースもある。  そんななか、にわかに注目されているのが「退職代行サービス」だ。

年間1万件以上の相談がある退職代行サービス「EXIT」

新野俊幸

EXIT株式会社 代表取締役の新野俊幸さん

 従業員に代わって、職場に退職に関する連絡をしてくれるもので、人によっては有給休暇を組み合わせることで、実質的に即日退職が可能になっている。  2017年に日本で初めて退職代行サービスを手がけた「EXIT」は、業界最大手として年間で1万件以上の相談があるという。  同サービスを立ち上げたEXIT株式会社 代表取締役の新野俊幸さんに、退職代行サービスの利用者が増えているワケやその利用実態について話を聞いた。

大手企業とベンチャーで経験した「仕事の辞めづらさ」

ビジネス

※写真はイメージです(Photo by Adobe Stock)

 新野さんが退職代行サービスの事業を始めたのは、かつて勤めていた企業で「会社の辞めづらさ」を感じていたのが原体験になっているそう。 「新卒でソフトバンクに入社したんですが、毎日上司に怒鳴られていたこともあり、1年足らずで辞めました。ところが、400人いた同期のうち、1年で退職したのは自分含めて2〜3人くらいだったんですよ。先輩、上司、友人、親など周囲の誰に相談しても『せっかく大企業に入ったのにもったいない』と引き止められてしまって。  それでも、私の場合は退職できたんですが、営業の同期がストレスで嘔吐するほど大変な思いをしながら働いているのをずっと見ていて、とても辛そうだったんです。会社を辞めるのは『権利』としてあるのに、自分で言えない人は本当にきつい状況に追い込まれると、そのときに感じていました」  新野さんはソフトバンクを退職後、リクルートへ転職する。通信キャリアでの経験から、セキュリティエンジニアとしてポテンシャル採用されたのだ。 新野俊幸 しかし、リクルートでも上司と馬が合わず、人間関係の確執から約1年で退職を決意。 「当時の人事から『またお前は逃げるのか』と言われましたが、自分の中では“攻めの辞め方”だと思い、特に気にすることなく次の会社を探そうとリクルートを辞めました。職を転々とする『ジョブホッピング』は、とかくキャリアを汚すと言われていますが、若いうちなら5〜6社くらいまでなら、自分と価値観の合う会社に出合うまで、転職を繰り返すのは悪いことではありません。世界的に見ると、1社に長く居続けること自体、珍しいんですよ」  大手企業の次に新野さんが選んだのは新興ベンチャーのサイバー・バズ。インターネット広告を手がける同社は、若手を中心としたベンチャー気質あふれる社風で、新野さんも職場に馴染み、営業では好成績を残した。  他方、「会社への貢献度が高いゆえ、それはそれで辞めづらかった」と新野さんは言う。 「会社の数字を作る人材として、重宝されていたこともあり、『まだ辞めないでくれ』と引き止められ、自分の意向で辞めづらい雰囲気を味わいました。ネガティブな退職理由ではなく、こうしたポジティブなことでも、会社を辞めるのは一筋縄ではいかないことを経験できたのは、今の事業にも生かされていると感じています」
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1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

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