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日高屋82歳会長が語る、“4億3000万円分”自社株譲渡の真意「人が唯一の財産。成長したら分配したい」

日々、重い中華鍋を振って頑張ってくれた

――なかなか日本で浸透していない理由のひとつに、アメリカほど株が身近でないことも関係していそうですね。 神田:そうですね。従業員みんなに自社株をあげると、その人たちも経営者になれるんです。自社株式贈与して従業員が頑張れば、また株価が上がったり配当も渡せるし、相乗効果だと思いました。  うちの場合、普通の会社と違って、従業員が深夜も寝ずにやってくれた賜物だから、見ず知らずの人に寄付したりするよりも一緒に作り上げてくれた人に渡すのが筋かなと。日々、重い中華鍋を振って頑張ってくれているんだから、利益がでたら返すのは当たり前のことだと思います。 ――従業員の皆さんの声はいかがでしたか? 神田:皆さん喜んでましたね。なかには、私が贈与した株を使って、おふくろさんが病気で入院できたって報告してくれたこともあって、多少いいことしたかなと思いました。  うちは今から24年前に株式公開をしましたが、その3年前に持ち株会作りました。創業当初15歳からずっと働いてくれていた店長がいたのですが、持ち株会を通じて株をずっと買い続けていたそうです。コロナまでは経営も安定して増収増益続きだったこともあり、定年で辞めるときにまとまった資産になったと聞いています。

「人が財産」と語る神田会長

ハイデイ日高

「逆に雇用されているような気持ちを持たないと。だって人は財産ですから」と話す神田会長

――神田会長にとって、会社経営で一番大事にしているものは何ですか? 神田:何といっても「人」を一番大切にしています。うちは時価総額は1000億円近くあるけれど、約450店舗あるなかで店舗はみんな賃貸でやっているので、じつは「資産」と呼べるものが何もないんですよ。だから、人が唯一の財産だと思っています。  私は会社が成長したらみんなに分配したい。本当の企業経営って関わってくれるすべての人に感謝するところから始まると思うんです。逆に雇用されているような気持ちを持たないと。だって財産ですから。 ――日高屋のほかにも「焼鳥日高」も展開しているようですが、どのような事業なのでしょうか? 神田:年取ってもまだ元気に働きたい人や病気になって手に力が入らない人にも働ける職場を作っていきたい、生きがいを作ってあげたいという想いから作りました。福利厚生の一環ですね。
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必ずやる「ゲン担ぎ」
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医療従事者として都内総合病院に勤務していたが、もともと興味のあったWebライティング業界に思い切って転身。大手メディアと業務委託契約を結び、時事ネタ・取材をメインに記事を執筆。中には450万PVを達成した記事も。ちなみに国内外問わず旅行が趣味で、アメリカ・オーストラリアで生活をした経験もあるバイリンガル。現在、海外移住計画中
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