「津波の心配はありません」なぜこの言いまわし?気象庁や“言葉の専門家”に聞いてみた
世界有数の地震大国である日本。2023年5月にも石川県能登地方で震度6強が観測されるなど、大きめの地震がたびたび起きており、地震速報を目にすることも少なくない。地震速報のニュースを見ているとき、「津波の心配はありません」という独特な言い回しが気になったことはないだろうか?
三省堂国語辞典 第八版』の編集委員の飯間浩明さんにインタビュー。果たしてその真実とは――?
まず話を聞いたのは、日本放送協会(NHK)。NHK公式ホームページにあるお問い合わせ欄のメールフォームから地震発生時の地震情報で使われる言い回しの根拠について尋ねたところ、数時間後に以下の回答がきた。
「『津波の心配はありません』の根拠についてですが、気象庁の発表に基づいていますので、気象庁にお尋ねください」
つまり、「津波の心配はありません」という表現は報道機関が独自で決めている文言ではなく、気象庁から発信された内容ということだろう。
そこで、今度は 地震・津波の監視や情報発表を行っている気象庁の地震火山部地震津波監視課の丹下豪さんに津波警報の歴史について取材した。
――地震速報で「津波の心配はありません」というアナウンスをよく見聞きします。津波警報の歴史について詳しく教えてください。
丹下豪(以下、丹下):そもそも日本における津波警報体制は、1941年9月11日に仙台地方気象台(仙台管区気象台の前身)を中心とした気象官署によって、三陸沿岸に対する津波予報を実施するための組織(三陸津波警報組織)が発足したことに始まります。全国的な津波警報体制は1949年に確立されました。
これまでの津波予報の歴史をまとめた「津波予報業務の変遷」(2011年)という資料によると、昭和は「津波なし」と報じられていました。1995年4月に気象庁の地震監視システムが新しくなり、それに合わせて地震や津波に関する情報も改善された結果、「津波による災害のおそれがない旨についての注意喚起は、津波の心配はない旨を地震情報の付加文に含めて発表することとし、可能な限り『津波なし』の津波注意報を発表しないこととする」ようになったと記載があり、ここで初めて「津波の心配はなし」という一文が生まれました。
なぜ「津波は起こりません」「津波の可能性はありません」などではなく、わざわざ「心配」という表現にしているのか? そもそも津波の心配をしている“主体”は誰なのか?
素朴な疑問を解決するため、筆者はニュースを放送しているテレビ局、地震・津波のデータを解析し、警報や注意報を発表している気象庁。さらには“言葉のプロ”である『
NHKは「気象庁の発表に基づいています」
日本の津波警報「歴史のはじまりは仙台」
医療従事者として都内総合病院に勤務していたが、もともと興味のあったWebライティング業界に思い切って転身。大手メディアと業務委託契約を結び、時事ネタ・取材をメインに記事を執筆。中には450万PVを達成した記事も。ちなみに国内外問わず旅行が趣味で、アメリカ・オーストラリアで生活をした経験もあるバイリンガル。現在、海外移住計画中
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