今どき、ものづくり工場で急成長。氷河期世代の社長がアートを事業にできたわけ
なにもかもがネット上で完結して、IT企業ばかりが勢いづいている昨今。“成功者”もIT起業家が目立つ。
そんな時代にあって、ものづくりで急成長している「TASKO」(東京・品川区)という面白い会社がある。美術・設計・メカニック・イベント演出等のプロが集まり、機械仕掛けのアートから舞台美術、ヘンテコなおもちゃまで、何でも作ってしまう「ニューものづくり工場」だ。
創業社長のタイチナオキさんは、2012年に同社を起こす前は、吉本興業でアートユニット・明和電機のマネジャーをつとめていた。週刊SPA!で連載していたコラムニストの故・勝谷誠彦さんのマネジャーでもあった。
今どき、リアルな物体、それも「アート」がビジネスになるのか?
また、就職氷河期世代ド真ん中のタイチさんは、どのようにサバイブしてきたのか? TASKOの溝の口ファクトリー(川崎市)を訪ねて、話を聞いた。
――この溝の口ファクトリー、まるでホームセンターですね! あらゆる材料や工具、試作品、手づくりアイテムがあふれかえってる…。
タイチ:もう、作れないものはない、っていうぐらいです。
クライアントからの仕事、特に広告関係は、アイデアを思い付いたらすぐ作れるスピードが大事。アーティストが一人で1年かけて作ってる場合じゃないと感じてます。
企画・デザインができて、エンジニアがいて、工房があって、アイデアを形にできる会社って、意外とないんです。
――正直、アートってビジネスになるの?と思ってたんですよ。アーティスト=食えない、というイメージもあって。
タイチ:アーティスト一人だと、資金力がないとか、仕事が重なるとこなせないとかで、食うのが大変ですよね。じゃあチームでやろう、というのがTASKOです。いまは社員35人、アルバイト入れて45人ぐらいですけど、チームでやれるのは強いですね。
――お仕事の実績を見たら、すごくて驚きました。銀座のショーウィンドウ、大企業の広告の美術、美術展や芸術祭への参加、ものづくりワークショップ……。気取ったアートじゃなくて、どこか笑いやガラクタ感がありますね。特に自慢の作品はありますか?
タイチ:銀座・和光のウィンドウディスプレイ(2018)では、電動の人形たちがクリスマスソングを演奏するっていうのを、企画から施工までやりました。「動かす」という要素を入れると、歩いてる人の足が止まるんですよ。 これが映像だけだったら、どんだけすごいのを作っても、「映像か、はいはい」となって足が止まらない。人形が動くような“リアル”はやっぱり強いんです。
――TASKOの作品を集めた展覧会「つくる展 TASKOファクトリーのひらめきをかたちに」を、各地で開催していたそうですね。
タイチ:はい、全国を巡回していて4都市目で、今後も巡回予定です。クライアント仕事の作品もあるけど、大半はTASKOの自主制作です。オルガンの音に合わせて香りが出る作品とか、ひかりの3原色で遊ぶ作品とか。楽しいですよ。
会社はまるでホームセンター
リアルな物体は、やっぱり強い
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