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「お前みたいなのが生活保護を受ける権利があるわけないだろ」闘病中のシングルマザーが絶望した一言

ナイフを握りしめ「1時間ほど自動ドアの前に立っていた」

 自助も壊滅し、さりとて公助にも期待はできなかった。 「ある日、これ以上痛みを我慢できないという限界まで耐えて救急車で運び込まれました。結果としてはそこで入院し、治療を再開することができました。例のケースワーカーが来て、『あんたはどうなっても良いんだけど、子どもがいるからな』とぶつぶつ言っていたのを覚えています。私の手を握っていた子どもをケースワーカーが無理矢理引き剥がしたため、子どもは大声で泣いていました」    すべてから見放された。すべてが敵なのだ――丘咲氏がそう感じたところで、冒頭に戻る。気がつけば、ナイフを握りしめて役所の前に立っていた。 「ケースワーカーを殺して自分も死のうと思い、1時間ほど自動ドアの前に立っていました。しかしニュースになったとき、私がただの悪者になって終わるんだなと思うと、悲しい気持ちになり思いとどまりました。また両親を絶対に刺してやろうと実家に向かったはずなのに、見慣れた光景がしんどかった日々に重なって、断念しました。今があるのは、そのときのフラッシュバックのおかげだと現在では思えます

闘病中に税理士の資格取得を決意

丘咲つぐみ氏

現在は“二刀流”の税理士に

 丘咲氏は闘病中、28歳で資格試験の取得を目指した。雑誌を購入し、右も左もわからないまま、数多ある資格から選んだのは税理士。在宅での仕事が可能で、子どもを育てられるだけの収入が決め手だ。 「当初、大手税理士事務所に所属していましたが、自分がやりたかった虐待サバイバーの支援活動をしていくうちにNPO法人などからも仕事をいただくようになりました。一般企業とNPO法人などは会計の手法がまったく異なります。不思議な縁で、私はどちらも扱える税理士になることができました
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虐待サバイバーでも「幸せな家庭を築くことはできる」
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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