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「お前みたいなのが生活保護を受ける権利があるわけないだろ」闘病中のシングルマザーが絶望した一言

虐待サバイバーでも「幸せな家庭を築くことはできる」

 現在、丘咲氏はかつて自分を虐待した両親を恨んでいないという。 「私は両親が好きで、コミュニケーションをしたくて、けれども両親は残念ながら子どもに愛情を傾けることのできない人たちでした。母は自分が思うように生きられない原因のすべてを家族にしたがる人で、有形無形の暴力を受けて育った私は、いつしか彼女に怯えるようになりました。けれども、今なら母もまた母の家族のなかでの犠牲者だったんだなと思えます。案外、私の人格に母以上に影を落としたのは父のほうで、被害事実に向き合うまでに私もかなりの時間を要しました。   『虐待が連鎖する』というパワーワードが独り歩きし、虐待されて育った人のなかには結婚や出産をためらう人が少なくないと思います。しかし、きちんと被害事実を受け止めることができて、次の世代に波及しないようにしたいと心から願うことができれば、連鎖への抑止が期待できると思います。これらに加え、信頼できる支援者に繋がることができて、心理的ケアを受けることによってトラウマを回復させることができれば、虐待サバイバーであっても幸せな家庭を築くことはできると私は思っています」  握りしめた手のうちに刃物を忍ばせ、悲しげに殺意をにじませていた丘咲氏はもういない。声をあげ、社会と積極的に繋がることで得た、仲間や資格という武器。今度はその切っ先で、虐待支援の新境地を拓く。 <取材・文/黒島暁生>
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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