明暗分かれる「国産スポーツウェアブランド」。野球の1/13しかいない“競技人口の少なさ”が苦戦の理由か
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
コロナ禍で一時停滞したスポーツ用品市場ですが、回復の兆しを見せています。特にゼロコロナ政策を解除した中国市場は旺盛な勢いを取り戻してきました。この分野で日本を代表する会社が、ミズノ、ヨネックス、デサントです。3社ともに日本のみならず世界で展開していますが、ここにきて明暗が分かれてきました。
ミズノ、ヨネックスは暗黒期を抜けて好調な半面、デサントは完全回復しきっていません。なぜなのか、その理由を探っていきましょう。
ミズノは2024年3月期上半期の売上高が、前年同期間比15.4%増の1145億円、営業利益が同14.2%増の92億円でした。大幅な増収増益で折り返し地点を通過しています。
同社は通期売上高を前期比6.1%増の2250億円、営業利益を同150億円と予想しています。上期売上高の進捗率は50%を超過、営業利益に至っては60%を超えています。
2023年3月期に売上高、営業利益ともに過去最高を更新しましたが、今期はそれを更に上回る見込みです。
2019年3月期の営業利益率は4.3%でしたが、2023年3月期は6.1%まで上昇。2024年3月期が予想通りに着地すると、6.7%となります。利益率でみても、過去10年で最も高い数字です。
ミズノはアメリカやヨーロッパ、アジアなど世界中で事業を展開していますが、売上高の6割は日本で稼いでいます。円安の影響は多少あるにせよ限定的。国内の販売動向が業績のカギを握っています。
2024年3月期上半期において、売上高が大きく、増収効果が高かったのが野球カテゴリ。売上高は前年同期間比2割増の228億円でした。
今年はワールド・ベースボール・クラシックの第5回大会が日本で開催され、日本が3度目の優勝を果たして国民を熱狂させました。史上最強と言われた「侍ジャパン」は世界中が注目するチームとなりました。大谷翔平選手のようなスター選手が生まれたことも、野球人気に火をつけています。
コロナ禍でブームとなったゴルフ用品も好調で、業績伸張に一役買っていました。そこに野球ブームが重なったのです。
この会社が好調な理由が他にもあります。値上げです。2022年7月からフットボールシューズやフットサルシューズなどの価格改定を段階的に行ってきました。ミズノのフットボールカテゴリは、全カテゴリの中で伸び率が最も高く、2024年3月期上半期は前年同期間比で7割以上伸び、85億円となっています。値上げが奏功したと言えるでしょう。
なお、野球用品はインフレが目立ち始めた後も、主だった価格改定をしていませんでした。しかし、今年9月21日にアパレルの値上げを行っています。下期の業績はこの効果が多いに反映されるはずです。
利益率が過去10年で最高に
WBCブームで野球カテゴリが大幅に伸張
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フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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