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明暗分かれる「国産スポーツウェアブランド」。野球の1/13しかいない“競技人口の少なさ”が苦戦の理由か

世界をリードするバドミントン中国代表チームと契約

ヨネックス

ヨネックス業績 ※決算短信より筆者作成

 ヨネックスも好調です。2024年3月期上半期の売上高は前年同期間比15.2%増の577億円、営業利益は同21.1%減の56億円でした。減益となったものの、ヨネックスは今期の通期営業利益を前期比6.3%増の107億円と予想しています。3期連続の増益予想。上半期の時点で、営業利益の通期予想に対する進捗率は52.3%となっています。  ヨネックスは2023年3月期に売上高が1000億円を超えました。コロナ禍を迎える前の2019年3月期は610億円でした。売上高は2倍近くまで膨らんでいます。  同社の主力分野といえばバドミントン。巨大なマーケットである中国と台湾で需要が急増し、業績を押し上げています。  2019年3月期のアジア事業の売上高は172億円でしたが、2023年3月期は2.9倍の496億円に跳ね上がっています。  ヨネックスは2021年3月に世界屈指のバドミントン強豪国である中国代表チームと用具使用契約を締結しました。ラケット、ウェア、バッグ、シューズ、シャトルコック等を提供してチームをサポートしています。この効果もあってブランドへの注目度が上がり、増収効果に一役買いました。  東京オリンピックで、バドミントン男子ダブルスで台湾選手が中国を破って優勝しました。それをきっかけに台湾ではバドミントン熱が高まり、ブームを起こしています。台湾では2022年9月に3年ぶりの国際大会が開催されました。  ヨネックスはバドミントンの盛り上がりに合わせて積極的なマーケティングコストを投下していますが、それを十分に埋め合わせるだけの増収を成し遂げており、4%に届かなかった営業利益率は9%を超えるまでになりました。

中国での回復が遅れているデサント

デサント

デサント業績 ※決算短信より筆者作成

 一方で足取りが鈍いのがデサント。水着のアリーナや総合スポーツ用品のルコックスポルティフ、ゴルフ用品のスリクソンのアパレル分野などを手掛けている会社です。  2024年3月期上半期の売上高は前年同期間比4.9%増の599億円、営業利益は同15.2%減の41億円でした。デサントは今期の通期売上高を前期比5.3%増の1270億円、営業利益を同9.1%増の85億円と予想しています。堅調に回復しているのは間違いありませんが、コロナ前の2019年3月期は売上高が1400億円を超えていました。完全回復しきっていません。  デサントは依存度が高いアジア圏の売上高が戻っていません。特に中国で苦戦しています。  デサントは競泳水着に強みを持っています。しかし、この分野は競技人口が多くありません。日本水泳連盟によると、競技登録者数は20万人ほど。野球人口は20歳以上に限定しても268万人(笹川スポーツ財団「野球人口」)います。  現在は、「地域別戦略の実行」として、エリア特性に合わせたスポーツウェアの販売に注力しています。しかし、ミズノやヨネックスのようなドル箱領域に欠けています。  ポテンシャルを持っているのがゴルフでしょう。デサントは2015年4月にダンロップスポーツと提携し、同ブランドのアパレル販売はデサント、アクセサリー類はダンロップスポーツが行う契約を結びました。スリクソンはゴルフボールやクラブに強みを持ち、世界中に愛好家がいます。ブランド力は強く、伸びしろがあります。 <TEXT/不破聡>
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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