仕事

職場の“陰湿なイジメ”を受け続けた塗装社員の悲運「学校からも職場からも逃げ出すことができなかった」

人は必ず死を迎える。多くの人が、まわりや自分が納得した最期を迎えられるわけでもなく、10~20代といった若年者の死なら、なおさらのことだ。庄司伊月さん(仮名・当時20代)は、「弟と同じ死にかたをする人を少しでも減らしたい」と、当時を語ってくれた。

「怠け者!」と両親に叱られる日々

写真はイメージです(以下、同)

 伊月さんは、小学校の頃からスポーツ少女。自分にも厳しく、思うようなプレイができなかったときには自分の内腿を叩いて気合を入れるほど真面目な性格。短大卒業後は、手に職をつけるために知り合いの店で働いていた。 「私の母は片づけが苦手な人だったので、実家はいつも汚部屋状態。それが嫌だったので、短大卒業と同時に実家を出て1人暮らしをはじめました。だから、弟のこともあまり知らずにいたんです。…というよりは、見て見ぬフリをしていたというべきでしょうか…」  伊月さんには、年の近い弟Sさん(当時10代)がいた。Sさんは中学を卒業後、定時制高校に入学したが長続きせず、高校を中退。定職には就かず、アルバイトを転々とする日々を送っていたため、頻繁に「怠け者!」と両親に怒られていた。 「私からみると、怠けているという感じではなかったです。保育園の頃から落ち着きがなく、小学校の頃には授業に集中できなかったことも関係しているのではないかと思います。でも、両親には理解できなかった。だから、毎日のようにケンカしていたようです」

塗装系の会社で職が見つかった

 1人で暮らしつつもSさんのことが心配で、ときどきは実家に顔を出すようにしていた伊月さん。けれど、Sさんと両親のケンカは酷くなる一方。怒号が飛び交い、Sさんが暴れては家のモノを壊すようになったため、伊月さんが実家へ立ち寄る頻度も減ってしまう。 「そのあと、Sが親のツテを頼って塗装系の会社で働きはじめると同時に、社宅に入ることになったと両親から聞きました。両親は『芯から鍛え直してもらう』と意気込んでいましたが、本当に仕事が続くのか、そしてその選択が正しいのか、とても疑問だったのです」  けれど、伊月さんもSさんに手を焼いていたのは事実。1人暮らしのマンションに呼び寄せ、いっしょに暮らすことは無理だと感じていた。そのため、両親の決定とSさんが承諾したことに意見できるはずもない。 「でも、あとですごく後悔しました。Sは現場でいちばん年下だったこと、そして働く意欲が感じられないなどの理由から、周囲には馴染めていなかったようです。そして、そのうちパシリのように扱われるようになっていったと、あとから聞きました」
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学校に居場所がなかったあの頃と重なる
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ワクワクを求めて全国徘徊中。幽霊と宇宙人の存在に怯えながらも、都市伝説には興味津々。さまざまな分野を取材したいと考え、常にネタを探し続けるフリーライター。Twitter:@natukawanatumi5
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