「操り人形だと思っていた…」妻の“恐るべき逆襲”。浮気相手に貢ぐカネほしさに土地建物を抵当に…
ラクして稼げたら…そう考え、家族や他人を利用する人も少なくない。けれど筆者は、複数の「日掛け金融」で勤務した経験から、そのような人たちの末路を数多くみてきた。今回は、遊ぶカネ欲しさに妻を操り、朝から晩まで働かせていた男性が逆襲されるまでの話を紹介したい。
ちなみに日掛け金融とは、個人・法人を問わず経営者のみを対象に貸付をおこない、債務者から毎日集金をしていた特殊な金融会社である。なお、個人の特定を避けるために名前は匿名とし、事実を一部加工している。
日掛金融を営む事務所には、日々さまざまな人が訪れる。なかには、親族がお金を使い込んでいることや借金を抱えていることを知り、事情を聞こうと飛び込んでくるケースも少なくない。興奮状態で飛び込んできた菊池家長さん(仮名・20代後半)も、そのひとりだ。
「うちのM子(20代後半)が…、あっ…えっと…、菊池M子が、ここでお金を借りてますよね?俺はM子の夫で、菊池家長です。ここの日掛金融にも借り入れしているってメモが出てきて…。いくら借りているんですか?すぐに調べてください!」
目を剥き出し、鼻息の荒い菊池さんに、「顧客情報は個人情報になるので、M子さんが顧客かどうかはお伝えできませんし、ご本人様にしか情報を開示することはできません」と回答したところ、ますます取り乱し、「あのバカが…!」と受付カウンターを拳で叩いた。
「俺は、M子の夫だぞ?なのに、どうしてM子の情報が教えられない?あいつは俺に黙って運転資金を使い込み、さらに俺名義のクレジットカードで買い物もしまくってる。その上、俺を勝手に保証人にして借金までしてるんだぞ!」
そう捲し立てられても、どうしようもない。たとえ配偶者や家族でも、本人もしくは本人の承諾がなければ、借り入れ状況を教えることはできないのだ。そう説明してもまったく埒が明かない。ひとまず落ち着いてもらうため、菊池さんの状況について説明することになった。
「誰かに保証人になってもらうときは、その人の承諾が必要になります。そのため、菊池さんが保証人を承諾していない状態で勝手に借用書にサインされたり印鑑を捺されたりしていても、返済する義務のない場合がほとんどです」
そう説明し、あらためて菊池さんを宥めようとしていたとき、なんと顧客の菊池M子さんが事務所にやってきた。「え…っ?家長くん…?」と驚くM子さんから察するに、偶然の様子。「M子、お前…っ!」と詰め寄った菊池さんを制したのは、M子さんだった。
「もう、怒鳴っても家長くんの言いなりにはならないから!ずっと、好きだから我慢してきた。付き合いはじめた高校生の頃から7年間、デート代はずっと私もち。普段は友達を優先するクセに、欲しいものやお金に困ったときは連絡して甘えてくる」
気づけば、静かな空間にM子さんの声だけが強く響いていた。いきなりの修羅場に、事務所内の空気も凍る。全員の視線がM子さんに向けられていたが、本人はまったく気にしていない様子。いつもは静かにおっとりと話す印象のM子さんとは、まるで別人だった。
「結婚してから5年。家長くんは怒鳴ったり、ときには手を上げたりすることもあったけど、すぐにやさしくしてくれて、そういうところも好きだった。でも、ほかの女の人と不倫していることを知って調べていくうち、うまく私を利用してただけだと気づいたよ」
M子さんは、止まらない。さらに、「結婚したのも、私ならうまく操れるからでしょ?いっしょに立ち上げたネット通販の会社だって、すべて私に任せきり。自分は仕入れや勉強会と偽っては、ほかの女の人とデートしてたんだもんね」と続け、菊池さんを睨みつけた。
事務所に乗り込んできた債務者の夫
妻が登場、壮絶な夫婦喧嘩に…
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フリーライター。複数の金融業者に長く勤務。レアで波乱な人生経験を送ってきた
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