「現金500万円以上が消えた…」働き者だった店主を“酒と博打の沼”に引きずり込んだ手口が怖すぎた
愚痴や悩みは、“詐欺師の大好物”だということはご存知だろうか。複数の「日掛け金融」に勤務してきた筆者は、そのようなケースを数多く目の当たりにしてきた。今回はそのなかから、お酒のつまみ程度に妻の愚痴を話したことから転落した元顧客について紹介する。
ちなみに日掛け金融とは、個人・法人を問わず経営者のみを対象に貸付をおこない、債務者から毎日集金をしていた特殊な金融会社である。なお、個人の特定を避けるために名前は匿名とし、事実を一部加工している。
東根三郎さん(仮名・50代後半)は、日用品店や駄菓子屋、布団屋や自転車屋、個人経営の飲食店や小さなスナックなどが軒を連ねる場所で生まれ育った。親の勧めもあり、20代と若くして結婚した。
「生まれたときからずっと同じ場所で育って結婚。ワシは小さい頃から一人っ子として甘やかされ、金遣いが荒くて女癖も悪かった。気が強く、財布の紐が堅いA子との結婚を機に気を引き締めたのです。A子は、ワシの両親との同居も嫌がらず、よく働いてくれました」
近所に住む幼馴染とも、結婚後は顔を合わせたら雑談する程度。あとは半年~1年に一度会って食事をするかどうかぐらいに落ち着いた。A子さんは外出を咎めはしなかったが、酒を飲むと気が大きくなる東根さんに外出先での禁酒を約束させている。
「だから出かけても、全然楽しくない。それなら子育てと商売に専念しようと思ったんです。それを真剣に話したら、両親も喜んで店を譲ってくれました。ただ、両親はワシの金遣いの荒さを知っているので、経理は妻、店兼自宅の土地と建物は、両親名義のままでした」
それでも、「子供が家に居てくれたときには頑張れた」と東根さん。ところが、息子が県外に就職し、娘が県外に嫁いでいなくなると、心にポッカリと大きな穴が開いてしまう。そして、A子さんからの注意やアドバイスに耳を傾けられなくなっていく。
「そんなときに両親が次々と亡くなり、土地や建物など財産を相続。売上が伸び悩んでいた店の番をA子に任せ、ワシはA子の両親が営む会社の役員を務めることになりました。でもストレスが溜まるから、両親が遺してくれたお金で、コッソリ飲み歩くようになったのです」
そしてある日、近所にある小さな飲み屋へと足を運んだ。その店は、東根さんが子供の頃からあったが、いまは婿養子に入った男性が大将として店を継ぎ、前オーナー夫婦は隠居。そのため、東根さんは一見(いちげん)さんのようなものだった。
「でも、同じ町内。ワシの両親が亡くなったときに挨拶を交わしていて、お互いに顔見知り。大将は『ご両親が亡くなって、大変ですね。何かあれば頼ってください』と、穏やかな笑顔で言い、『どうです?一杯。奢りますよ』と、空のグラスを渡してくれたのです」
子育てと商売に専念するのがワシの使命
子育てが終わると飲み歩きの悪癖が復活
フリーライター。複数の金融業者に長く勤務。レアで波乱な人生経験を送ってきた
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