更新日:2024年01月09日 12:06
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Amazonは“日本企業のように”「気合でなんとかする」ことをしない… 至極真っ当なその理由

「善意よりも仕組みを重視する」哲学が

アルバイトを経て、筆者は新卒一期生としてAmazonに入社するわけだが、ここでAmazonが大事にしている理念をいくつか学んだ。 Amazonには、「Good Intentions don’t work, only mechanism works!」という経営哲学がある。これは、直訳すると「善意は機能しない、仕組みだけが機能する」という意味である。 「自分が少し無茶してがんばればよい」という“善意の行動”は、すべての社員ができるわけではない。そうではなく、全員が無茶なく、ミスなく適用できる仕組みを整えよ、というのだ。 元CEOのジェフ・ベゾス氏的に言えば「役立たずの善意」は葬り去るべし、なのである。

「根本的な問題解決」こそが必要

象徴的なエピソードを一つ紹介しよう。ジェフ・ベゾス氏が、役員全員でコールセンターを視察したときの話だ。 この時期、コールセンターには、「脚が壊れている机」に対する返品交換の問い合わせが頻繁に届いていた。ここに勤めるあるベテランの50代女性は、顧客から「先日買った机の……」と言われた瞬間に「あ、脚が壊れている件ですよね、すぐに取り替えますね」と返事し、返品交換を迅速に済ませていた。 彼女の「素早い対応」に対し、訪れた役員はみな褒めていたという。だが、ジェフ・ベゾス氏はこれに対し不満げな表情を浮かべたのである。ベゾスはこう言った。 「そもそも机が壊れている理由をあきらかにすべきだ。メーカーに対して壊れている理由を聞いて原因を解消すべきだろう。この問い合わせ自体が来ないことが、本質的な解決策だ」 すると、彼女は「私もそう思っていたんです。でもシアトルにあるAmazon本社への問い合わせ方法がわからなくて」と答えた。 「ならばシアトル本社のバイヤーとすぐに連絡が取れる体制にしよう」 ベゾスの考えはこうだ。 机以外に、他の商品でも同じような不良品の問題が起きているはず。ならば、壊れている理由が明らかになる体制を作らなければ、根本的な問題解決にはならないーー。 つまり、「勝手な工夫≒役立たずの善意」ではなく、組織全体の仕組みやルールを整備することに注力したのである。このエピソードは、先ほど話した筆者が「勝手に工夫したら怒られた」という話につながる。
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「気合でなんとかする」はNG
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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