更新日:2024年01月09日 12:06
お金

Amazonは“日本企業のように”「気合でなんとかする」ことをしない… 至極真っ当なその理由

「気合でなんとかする」はNG

もう一つの例として、「安全を徹底追求する」取り組みを紹介しよう。Amazonの倉庫内では、転んで軽く血が少し出るレベルでも「危険」と定義されるほど安全への配慮とルールが敷かれている。 たとえば、紛失・混入を起こさないために、カッターナイフを使うときは絶対に定位置が決まっている。さらに使用者は名前を書き、「誰がどんなときに使ったか」まで記入することが義務付けられている。ミスが発生しないように配慮し、発生したとしてもどこに責任と原因があるか明らかにするためだ。 ほかにも、荷物を持つときすらも厳格なルールが決められていた。腰を壊さないように15kg以上の荷物は必ず2人以上で持つことが義務付けられており、1人で持つのは絶対に禁止。仮に2人確保できない場合でも「気合でなんとかする」という”善意”はNGなのだ。

「KAIZEN」という明文化されたルール

では、人員が1人欠けたときにどうするのか。Amazonは意外な答えを持っている。 気合でなんとかするのが日本企業だとすれば、AmazonはメカニズムやツールIT化で解決策を考えるのだ。つまり、「only mechanism works」である。 とはいえ、安全を重視すると、どうしても仕事のスピードが遅くなる……と思いがちだ。だが、Amazonでは安全とスピードが両立できる仕組みを整えていた。 それが「KAIZEN」という明文化されたルールの存在だ。社内で改善したいポイントがあった場合、Amazonではただ改善案を会議で出すのではなく、それがどれだけの金銭的メリットをもたらすかを具体的にエクセルで試算して提示することが義務付けられている。 これはあの有名なトヨタが始めたルールだが、Amazonでも徹底されており、「みんなで汗水垂らして働こう!」ではなく、「みんなで新たなPLAN B(別の案)を出そう!」という理念が浸透していたように思う。素敵な改善案も、明確な採算性向上が期待でき、かつ誰もが行動に落とし込めるものでなければ「勝手な工夫」となってしまうのである。
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改善案は分かりやすく「お金に換算」
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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