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お台場「ヴィーナスフォート」の今。開館から25年、改めて“最先端の施設”に生まれ変わる

日本初となる全天候型の照明が取り付けられた

こうしたテーマパーク型施設が各地に誕生する中、ヴィーナスフォートは1998年、お台場に誕生したのであった。 ヴィーナスフォートは、新横浜ラーメン博物館や滝見小路とは異なり、中世ヨーロッパのような街並みが再現されている。日本初となる全天候型の照明が取り付けられたことでも話題を呼び、天井に描かれている空は青空から夕焼けまで、その時間に合わせた演出を行うことができるようになった。まさに、テーマパーク型商業施設の極北のような施設である。
ウェアハウス 川崎

「ウェアハウス 川崎」内部。ゲームセンターだとは思えない。これも閉館間際の2019年11月に筆者が撮影したもの

そういえば、書いていて思い出したのだが、かつて川崎に「ウェアハウス 川崎」というゲームセンターがあった。これは、ただのゲームセンターではなく、館内全体が香港の九龍城砦をモチーフにしている場所だった。そのこだわりはすさまじく、館内で貼られている張り紙などはすべて実際に九龍城砦がある香港から輸入したものだったという。同館は惜しまれつつ、2019年に閉館してしまったが、テーマパーク的商施設の広がりは、このようなかなり変わった施設までをも生み出した。

踏襲されていった「ディズニーランド」の手法

こうしたテーマパーク型施設が立脚しているのは、やはり「ディズニーランド」の手法である。つまり、ある限られた区画の中を一つのテーマに沿って、徹底的に演出する。ディズニーランドはそれを非常に高度な方法で行ったわけだが、その方法論は、ディズニーランドが日本にやってきてからほぼ10年後に、一般の商業施設でも踏襲されてきたのである。 興味深いのは、こうした「テーマパーク型」の施設は、建物の中を超えて、どんどんと広がりを見せている、ということだ。この点については、東浩紀の『テーマパーク化する地球』(株式会社ゲンロン)に詳しい。ロイヤル・カリビアン・インターナショナル社のカリブ海クルーズを取り上げながら、その船内や、あるいは寄港地・ハイチの様子がいかにテーマパーク的な「演出」によって成立しているのかについて書いている。 クルーズ船の中にはラゾーナ川崎ぐらいのサイズのアーケードが設置されており、そこで掲げられる看板はディズニーランドやユニバーサル・スタジオで見られるかのようなポップなものだと東は言う。また、寄港先の一つであるハイチは、そのクルーズ会社が買い上げた土地が整備されてある場所であり、クルーズ船の客たちはそこで海水浴などをして過ごすことになるという。 つまり、ここでは船内から寄港地に至るまでのすべてが、クルーズ会社によって徹底的に演出されているのだ。ちなみに東は同書でこれ以外にもニセコのスキー場を観光地がテーマパーク化している例として取り上げている。
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テーマパークは場所ではなく「思想」のこと
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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