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V字回復した「USJ」と「西武園ゆうえんち」の共通点。“立役者”の次なる舞台は沖縄とお台場に

全国に数多くあるテーマパーク。今もなお新しいテーマパークが生まれては人々を楽しませ続けている。しかし、そんなテーマパークには、あまり語られることのない側面が存在する。そんな、「テーマパークのB面」をここでは語っていこう。 2025年、沖縄県北部に誕生するテーマパーク「JUNGLIA」。このテーマパークの建設を主導するのが、「株式会社・刀」の森岡毅だ。森岡氏は経営状況が落ち込んでいたUSJの業績をV字回復させ、それに続いて手がけた西武園ゆうえんちの大幅なリニューアルも大成功させた人物。 「JUNGLIA」がどのようなテーマパークになるのかについては、まだ詳細が分からないことは以前の記事で書いた通りだ。明かされているいくつかの情報によると、沖縄の自然を活かしたアトラクションや施設が用意されている、という。これを聞いたとき、私は森岡氏がテーマパーク再建の際にたびたび採ってきた戦略の「クセ」を、この計画にも感じ取った。 それは、「リノベーションの思想」とでもいうべき思想である。
USJ

DRN Studio – stock.adobe.com

映画らしからぬ『ONE PIECE』コラボが大成功

USJについて、振り返ってみよう。 その著書『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(KADOKAWA)で回想している通り、森岡はUSJの業績を復活させる際、完全に一から新しい何かを作り出すだけではなく、すでにUSJが行っていた試みを利用する形でさまざまなプロジェクトを押し出していった。 例えば、その一つがマンガ『ONE PIECE』とのコラボレーションだ。USJではもともと、『ONE PIECE』とのコラボレーションを行ったショーが行われていたが、それらはあまり大きくは打ち出されていなかった。社員たちの中に「USJは映画のテーマパークである」という強い認識があったためだ。 しかし、森岡はこの「映画らしからぬ」部分に目を付け、そのショーを強く顧客に訴求することで、USJの大きな目玉の一つとした。『ONE PIECE』とのコラボレーションは大きな人気を博し、USJのV字回復への弾みとなる。すでにあった資源を再利用し、見せ方を工夫することでテーマパークを再建させる。まさに「リノベーションの思想」が端的に現れた事例だろう。

「後ろ向きで走るジェットコースター」は“9時間40分待ち”に

また、書籍のタイトルにもなっている「後ろ向きで走るジェットコースター」もその一例だ。ディズニーランドが開園30周年を迎える2013年、この年にはUSJの集客も落ち込むことが予想されていた。その凹みをカバーできるプロジェクトはないか。 それを考えたときに森岡が思いついたのが、USJにあったジェットコースターである「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド」を逆に走らせる、ということだった。当初は技術陣たちの大きな反発を呼んだこのアイデアだったが、森岡の説得に応じる形でさまざまな安全性のテストが実施され、実際に稼働した「ハリウッド・ドリーム・ザ・ライド〜バックドロップ」は大きな成功をおさめる。なんと日本でのアトラクション待ち時間の最長記録、9時間40分を記録したのだ。 森岡は同書の中で、USJを復活させるときのアイデアとして浮かんできたのが「リノベーション」戦略、つまり「既存のものを新しく生まれ変わらせるべく手を加えて改造・改築する」戦略が頭にあったことを回想している。
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施設の古さが問題になっていた「西武園ゆうえんち」
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ライター・作家。チェーンストアやテーマパークをテーマにした原稿を数多く執筆。一見平板に見える現代の都市空間について、独自の切り口で語る。「東洋経済オンライン」などで執筆中、文芸誌などにも多く寄稿をおこなう。著書に『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』(集英社)『ブックオフから考える』(青弓社)
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