なぜ西武は「和田より甲斐野を選んだ」のか。「人的補償制度」に潜む問題点も
昨年末にフリーエージェントでソフトバンクに移籍した山川穂高の人的補償は、発表の前段階では大ベテランの和田毅だという報道があった。
これには、ソフトバンクファンだけではなく、多くのプロ野球ファンが衝撃を受けたのではないだろうか。そんな状況の中で、蓋を開けてみると中継ぎとして活躍を見せていた甲斐野央が人的補償として移籍することが正式発表されたのだ。
ソフトバンクからすると、昨シーズン二冠王に輝いた近藤健介がいるものの、主軸の柳田悠岐が高齢となり、打線のパワー不足は否めない状況だった。
実際のところ、ソフトバンクは2015年オフに李大浩との契約が切れた翌年の2016年に優勝を逃しており、直近もアルフレド・デスパイネが年齢的な衰えで機能しなくなってからは、苦しいシーズンを送っていた。この状況を打開するために、山川をFAで獲得した。
この山川や元巨人のアダム・ウォーカーの獲得により、打線の火力は上がっていくだろう。小久保裕紀氏が初年度となる今シーズンは、各選手の役割がより明確になったことで、2010年代後半のような強さが期待できる。
その代償として長年先発陣を支えてきた和田が、人的補償で移籍の話があがった。その後、報道内容は大きく変わり、甲斐野が正式に移籍になった。
埼玉西武に関しては、2018年オフに炭谷銀仁朗がFAを行使して巨人に移籍した際に、内海哲也を人的補償で獲得しているため、和田を獲得してもおかしくはない展開だったが、年齢等を含め甲斐野を選択したのだろう。
しかし、正式発表される前にソフトバンクの球団内でも動きがあったのではないだろうか。なぜなら、昨シーズンの甲斐野の成績や年齢的なポテンシャルを考えると、プロテクトに漏れていたのが疑問だからだ。ソフトバンクからすると、精神的支柱でありながら先発ローテーションで計算していた投手の和田が抜けることは、今後のことを考えると大きなダメージと考えた可能性もあるだろう。
また、埼玉西武からすると年齢的な部分や、中継ぎとして計算できる甲斐野の方が活躍する可能性が高いため、ここぞとばかりに獲得に動いたのだろう。
「打線のパワー不足」をカバーする山川の存在
和田より甲斐野を選んだ西武の目論見は…
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55
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