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「チャットレディの仕事が“孤独と不安”を埋めてくれた」パニック障害を発症した26歳女性の告白

居場所はもうここしかない

 朱に交われば赤くなる、とはよく言ったもので、人は周囲に影響されやすく、交際する相手によって善にもなれば悪にもなるのだった。  22歳で「うつ病」「パニック障害」と診断された華恋は、症状が安定するまでの4年間を風俗と共に歩んできた。いまは風俗の裏方として生きる華恋の仕事内容は、チャットレディ時代の経験を活かせる女の子の心のケア稼がせるためのアドバイス、そして出勤管理が主だ。 「華恋さんにとって風俗とは?」と尋ねると、「居場所はもうここしかないと思ってる。普通の仕事? いまは全く考えられないです」と言う。「なんで風俗しか考えられないの?」と質問を重ねると、華恋はしばらく考えた後、浮かない顔をして「結局は風俗の仕事も一つの安定剤なのかなって思います」と続けた。風俗が「居場所」というより、昼職に対して「自信がない」。そんな感じだった。

昼の世界は就労困難者への理解が足りない

 そこで思った。昼の世界は、こうした「就労困難者」への理解が圧倒的に足りないのだ。だからこそ精神疾患を抱えた多くの女性が風俗を選ぶ――あるいは選ばざるを得ない――のだ。就労困難者とは、就労に何らかの問題を抱えている人たちだ。日本財団の調査によると、多くは精神疾患を理由に1500万人以上いるとされる。  もちろん就労困難者たちを受け入れる夜業界の姿勢も問われる。「いまの彼氏がホストだったら?」と質問すると、華恋も紗希と同じく、「ホス狂いになってた自信がめちゃくちゃあります。それは本当にあります。多分、会った人がたまたま良い人だっただけで、会って、その人が実はホストで、すごい慰めてくれたらもう、『じゃあ頑張るよ』ってなる自信しかないです」と即答だった。  それでも風俗が「安定剤」で、もう一つの「安定剤」である彼氏に出会えたのも風俗がきっかけだったことは、隠しようのない事実だ。風俗業界は、華恋や紗希のように精神疾患を抱える者たちが、危うい基盤の上で働いている。だからこそ風俗経営者でも彼氏であっても、障害に乗じて搾取することが――例えそれを本人が望んでいるとしても――決してあってはならないと強く思う。華恋はいま、客と嬢として出会った彼氏との結婚を夢見ている。 <取材・文/高木瑞穂>
月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』、『黒い賠償 賠償総額9兆円の渦中で逮捕された男』(ともに彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)など。X(旧ツイッター):@takagimizuho2
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