「チャットレディの仕事が“孤独と不安”を埋めてくれた」パニック障害を発症した26歳女性の告白
ベストセラー『売春島』、話題の新刊『ルポ 新宿歌舞伎町 路上売春』など数々のノンフィクションを世にはなってきたルポライターの高木瑞穂氏(@takagimizuho2)。彼が新たなテーマに選んだのは、これまでタブーとされてきた「風俗と発達障害」だ(以下、高木氏寄稿)。
上司のパワハラによりパニック障害とうつ病を発症し、一般職を辞めてチャットレディになった華恋(仮名、26歳)。「もう風俗しかなかった」と語る彼女だが、昼職同様、客、そして同僚からのハラスメントはかたちを変えておさまらなかったというが……。
【華恋26歳(仮名)の前回記事を読む】⇒「上司のパワハラで“パニック障害とうつ病”を発症した新人OL。夜職を選んだワケは「稼げるし、優しい」」はこちらへ
仕事に慣れてからも、固定された週5日の出勤ノルマ全てに穴を開けることはあったが、「落ち着いたらまた来てください」と寛容だったので、華恋は自宅でひとり不安を抱えるなかで、現状以上に自信を失い孤立する怖さに押し潰されることがほとんどなかった。だから上司からの誘いもすんなり受け入れられたという。
――でも裏方の場合は、やっぱりきちんと出勤しなくちゃいけない。
「いけないし、いまのところ出勤できてます」
――治ったと言うか、パニック障害を起こさなくなったのはいつぐらいから?
「治ったみたいな意識はあんまりないかもしれないです。いまは、たまたまそういう症状が出てないだけっていう感じがしなくてもないです」
――なら、安定したのはいつぐらいからなの?
「そう聞かれると…。出勤はしてるし、パニックも比較的は落ち着いてきたんですけど、ついこの前も突然声が出なくなっちゃったことがあった。そうですね。ひどくはなってないけど、やっぱり突発的に起きるし、急に『うわ!』みたいな感じで出れないなってなってなることがいまもたまにあります。
――薬は?
「安定剤(抗うつ剤)を3種類処方されていて、症状がひどいときは飲んでいました。気持ちを抑える薬です。でも、あまり効かなかったから飲まなくなったし、病院にも行かなくなっちゃいました」
――安定しだしたのが薬じゃないとしたら。
「彼氏の存在。それがめっちゃあると思いますね。実はチャットレディ時代のお客さんで、普通の会社員なんですけど、風俗で働いてる私を肯定した上で『好きだよ』『頑張ってるよ』って。その彼氏の言葉をモチベに頑張れている、みたいな。だから症状が出るのは、彼氏と一緒にいないとき。自分の病んでるときに優しく構ってくれるんです。その人が安定剤みたいな感じです。なんか、ちゃんと自分自身の中身を好きになってくれてるんだっていう安心感を持てていて、あ、もうこの人じゃないと駄目だなって、いま、めっちゃ思ってます」
前回の記事でも話を聞いた早稲田メンタルクリニック・益田裕介院長は言う。
「人間は群れの動物なので、群れの中にいるだけでも安心し、落ち着くことができます。逆に孤独な状況だと、いくらお金があり、衣食住が安定していても安心感はもてません。彼氏という恋人の存在で心身が安定するというのは、とても理にかなっています」
パニック障害は落ち着いてきた
チャットレディ時代のお客さんと交際
1
2
月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島 「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』、『黒い賠償 賠償総額9兆円の渦中で逮捕された男』(ともに彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)など。X(旧ツイッター):@takagimizuho2
記事一覧へ
記事一覧へ
この記者は、他にもこんな記事を書いています
ハッシュタグ