更新日:2024年05月16日 12:50
恋愛・結婚

「妻が、子どもを脅すように叱るのをやめさせたい」という夫。しかし、原因は夫にあった

そもそも、Rさんは子どもの保育園の準備に関わっているのか

 僕は、Rさんが「保育園の準備」の詳細を知っているか聞きました。  するとRさんは、「『保育園の準備』は、基本的にお箸やコップ、ループタオルなど保育園で使った物の入れ替えがメインですね。私も時々ですが、送り迎えをすることもあるので何となくはわかります。不定期なものについては大体パートナーがいつもやってくれているので、詳細はよくわかりません」と答えてくれました。  次に、僕は、Rさん自身が保育園の準備をすることがあるかを聞いてみました。Rさんは次のように答えてくれました。 「私も保育園の準備をすることはあります。でも、私の帰宅は大体子どもが寝た後になることがほとんどなので、毎日子どもと一緒に準備することはできません。それに、保育園の送り迎えをしてくれているのはパートナーなので、パートナーが保育園の準備をするほうが効率的なんです。それに、パートナーの方が早く帰宅するんだから、保育園の準備くらいは何とかできると思うんですよね」  僕は、「Rさんのパートナーも、Rさんが仕事に専念できるよういつも精一杯努力してくれているわけですから、保育園の準備『くらい』と言うなら、Rさんが代わりにやってもいいのではないかと思うのですが、どうでしょうか?」と重ねて聞いてみました。  すると、Rさんは、「私だって、仕事が忙しい中、自分にできることはもう最大限やっているので、これ以上はちょっと……。それに、子どもの教育には小さい頃からの習慣が大事だと私は思っているんです。もちろん、パートナーも色々大変だろうとは思いますが、私が仕事で忙しくてできない分は何とか工夫してやってほしいんですよね」とため息交じりに答えてくれました。  皆さんは、Rさんの受け答えから何を感じられましたか?  僕は、残念ながら、Rさんには、家庭の状況に対する自分の関与や責任の認識がかなり乏しいのではないかと感じました(『「子煩悩なお父さん」を自称し、子育てを妨害する夫の実態とは』参照)。  Rさんは「自分にできることはもう最大限やっている」と言いますが、それはRさんのパートナーも同様かもしれない、という視点や配慮が欠けているからです。

妻側の目線では夫は「何もしないのに正論を押し付けてくる人」

 Rさんには「Rさんのパートナーも、もうすでに、できることを、一生懸命にやっているのでは?」という視点が抜けてしまっているため、ご自身の大切なパートナーを安易に責めてしまっているのです。  その結果、Rさんがほれ込んだパートナーの持つ美徳(子どもと遊ぶのが好き、ユーモアもあり、情に厚い)が発揮できない状態を自ら作り出してしまっていると考えられます。  すなわち、この相談内容は、Rさんのパートナーの視点からは以下のように語り直すこともできそうです。 「彼は、仕事の忙しさを言い訳にして、育児や家事の負担を一方的に私に押し付けてくるんです。私だって同じように仕事をしているのに……彼は『仕事が忙しい』『自分もやれることはやっている』の一点張りなんです。  じゃあ、あなたがやれなかったことは誰がするの?全部私が責任をもって後始末もやらなきゃいけないの?と言ってやりたいところですが、普段はすれ違いが多く、まともに話をすることもできません。正直、もう彼の当事者意識の希薄さには耐えられません。  何かあると、二言目には『僕は仕事があって』とか『それは君の役割だろう』とか、すぐに言い訳したり、こちらに責任を押し付けてくるくせに、何かと口だけ出してくるので余計に腹が立つんです!   私だって私なりに、仕事と家庭を両立させようと毎日必死なんです。もうこれ以上がんばれないくらい、毎日がんばっています。夕方、仕事を無理やり切り上げて子どもの迎えに行き、そこから夕食の準備や子どものお風呂・寝かしつけなど私には休む暇もありません。子どもの体調不良で早退したり、病院へ連れて行ったりするのもいつも私。  ヘトヘトに疲れていたら、子どもにさえ優しくできない時だって正直あります。それが良くないと言うことは自分が一番良く分かっています……。  それなのに、普段の私の努力や気遣いなどは一切お構いなしに、いつも無神経に『子ども相手にキツく叱り過ぎだ』とか正論や自分の考え方とかを一方的に押し付けてくるので、本当に頭に来るんですよね!私は彼の召使いじゃありません!!誰のせいでこんなに疲れてイライラさせられているのか。彼は何にもわかってないんです」
次のページ
見えない部分までパートナーが支えてくれているからこそ
1
2
3
4
DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

孤独になることば、人と生きることば孤独になることば、人と生きることば

モラハラ、パワハラ、DV
人間関係は“ことば”で決まる


記事一覧へ
おすすめ記事
ハッシュタグ