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「子煩悩なお父さん」を自称し、子育てを妨害する夫の実態とは

「パートナーの気持ちを尊重できない」父親は、その存在自体が悪影響

 ここでまず考えなければならないのは、相談者が「子どものために、という名目で自分の意に沿わないパートナーの考えをことごとく否定しているのではないか?」という点です。  親が子供をうるさく叱る、そこには何かしらの理由があるはずです。  どんな人も、それが常にできているかは別として「大切にしたい価値観」をもって子育てをしています。子育てに関わる時間も母親のほうが長い可能性が高いでしょう。  その「大切にしたい価値観」を、共に子育てをするはずのパートナーからことごとく否定され、自分を敵視され攻撃的な言葉を浴びせられたとしたら、その人はどのような気持ちになるでしょうか?  おそらくは深く傷つき、途方も無い孤独を感じ、攻撃してきたパートナーを敵と見做します。それは至極当然の結果です。上記のような行いから、自分が敵と見做されていると判断するからです。その孤独や不安、ストレスから子どもに辛く当たってしまっている可能性すらあります。  類似の事例として、加害者が被害者を傷つけて鬱や適応障害にさせておきながら「お前の病気のせいで家の空気が悪い。早く治せ」といったこともあります。つまり、家庭の状況に対する自分の関与や責任の認識がすっぽ抜けているのです。  加害者はパートナーの子育てに関する辛さも、育て方について「大切にしたい価値観」も、それを知ろうともせずに何もかもを否定するパートナーがいる辛さも、なにひとつ知らない可能性があります。

パートナーの気持ちをないがしろにする様子を子供に見せるのは虐待である

 加害者の考える「正しい子育て」を至高のものとし、パートナーの「大切にしたい価値観」などには目もくれず、話し合うことをしてこなかった可能性が伺えます。  同じ加害者から「仕事にかまけて家のことはやってこなかった」という言葉が飛び出すこともあります。時々目についた時に、相手の「大切にしたい価値観」を聞かないまま家事や育児に自分ルールを振りかざすのは典型的な加害の1つです。そこには話し合いがないからです。  「話し合う」とは、お互いの意見を聞くことであり、加害者が一方的に自分の主張を相手に飲ませることではありません。後者は一方的な攻撃により相手を支配する行為ですから、とても話し合いとは呼べないものです。  さらに問題なのは、加害者が「パートナーの気持ちを蔑ろにし、尊重することをしない」姿を常に見せ続けることにより、子どもの健やかな成長に悪影響を与えることです。夫婦間の加害=解釈強要を見せることは面前DVです。それにより子どもの脳の健全な発達が損なわれてしまう可能性すらあります。  このように子どもの味方をするふりをしてパートナーに暴力的な支配を行っている背景には、必ず加害者のニーズが存在します。今回で言うと「自分の理想の子育て」をしたい、ということです。
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パートナーから傷つけられながら、健全な子育てをすることは不可能
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DV・モラハラなど、人を傷つけておきながら自分は悪くないと考える「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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