更新日:2024年02月28日 12:42
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日ハム本拠地・エスコンフィールドに漂う“暗雲”。北海道ならではの「避けては通れない課題」が

「新幹線の札幌延伸」が救世主になると思いきや…

 まず、北海道新幹線の札幌延伸が2030年度に予定されているが、地元有力紙である北海道新聞によると、さらに延伸が4〜5年は遅れるという指摘もある。  しかし、地元では交通インフラ強化の期待よりも、不安の声があがっているのをご存知だろうか。在来線のJR函館本線の函館ー小樽間が新幹線札幌延伸とともにJR北海道から経営分離されることが決まっているのだ。  このうち、「山線」と称される長万部-小樽間は廃線を予定している。当然であるが、この廃線は観光客の滞在日数を増やすことに貢献するとは言い難いだろう。現在、廃線後は代替バスが検討されているが、運転手不足がすでに懸念されている。  北海道内においてより大きな経済効果を生むためには、訪れた観光客にいかにして札幌以外にも足を運んでもらい、滞在日数を増やすかが鍵となる。  そのために繰り返しになるが、在来線の新駅設置や、増便化により利便性を上げ、沿線住民や観光客からの運賃収入を得て、移動インフラを充実させることが有効だろう。これまでの「鉄道は地元住民の交通手段である」という前提を見直し、観光の文脈をより入れることが不可欠だろう。  具体的には、運賃の設計を見直すことだ。観光客が利用するレンタカーとタクシー料金を考えると、現在の鉄道運賃はかなり安い。よって鉄道運賃が多少値上げしても観光客は鉄道を利用するはずだ。鉄道会社の収益をあげつつも、地元利用者や定期券利用者には大幅な割引を行う。これにより、地元住民の満足度も維持できる。  その実現のためには、鉄道局と観光庁が従来の制度設計にとらわれず、柔軟な施策を新たに打ち出す必要がある。

新駅設置問題こそ「北海道内の交通インフラの現状」

 上記の施策を打てば、鉄道インフラが充実した状態が維持されるので、観光客の道内滞在日数が増える可能性が高い。  札幌へ新幹線が開通したとしても、沿線の交通インフラが衰退していてはせっかくの新幹線も宝の持ち腐れとなってしまう。在来線を維持、さらには発展させることを道内観光事業の起爆剤とするのだ。  現在、エスコンフィールドの新駅設置にすら四苦八苦しているが、ある意味では北海道内の交通インフラの現状をありのままに映し出した結果とも言える。  エスコンフィールドが今後も多くの人を引き寄せる魅力を保ち続けられるのかどうかは、北海道経済を見る上でのひとつの指標になるだろう。 <TEXT/田中謙伍>
EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している
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