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『沈黙の艦隊』で報道キャスターを演じる上戸彩「ネットニュースはついコメントまで読み込んでしまいます」

昨秋公開の大ヒット映画『沈黙の艦隊』に劇場未公開シーンをふんだんに加え、その後東京湾で起こる海戦までを描いた完全版ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1~東京湾大海戦~』がPrime Videoで現在全8話配信中。本作に、俳優の上戸彩がニュースキャスター・市谷裕美役で出演している。良きママのイメージの彼女だが、本作では原子力潜水艦をめぐる政府の情報隠蔽を疑い、真実を突き止めようと単身、権力に立ち向かっていく役どころを果敢に演じている。 一方、現実世界は今なお続くロシアのウクライナ侵攻に加え、イスラエルとパレスチナの衝突、止まらない物価高や裏金問題など相変わらず先が見えない。昨年、第3子が生まれ、仕事と家庭のバランスを取りながら充実した日々を過ごす彼女にとっても「他人事ではいられない」と語る。

出来事の裏にあるものを訴える強さが必要

上戸彩――今回演じられた役ですが、役作りにおいてはどう取り組まれましたか? 私が演じた市谷は報道キャスターなので、自分が普段見ている報道番組のキャスターの方をイメージしながら、もちろん滑舌もですが、カメラの奥にしっかりと訴える“強さ”を意識して演じました。でも、改めて自分の演技を見返してみると、思っていたよりも強さが足りてない気がしてしまい、伝えることの難しさを感じました。 ――特にフェイクニュースなどがあふれる今の時代は「信じること」が非常に難しいと思います。 そうですね。それでも真実を追いかける彼女の強さというか、ジャーナリストとしてのプロフェッショナルな姿勢はすごくかっこいいと思いました。 今、テレビの世界も歴史がいろいろ動きつつあると思います。撮影を終えた後のタイミングで、さまざまな報道番組で「真実を伝えるべきでした」と謝罪するキャスターの方々の姿に、私の中で市谷が重なりました。 ただ単に原稿を読むのではなく「真実」を追い求めるのがジャーナリストの仕事だと思うので、出来事の裏にあるものを訴える強さが必要だと感じました。 ――上戸さんはさまざまな情報をどう受け止めていますか? 私は今、テレビを見る時間がほとんどないので、どちらかというと子どもたちが寝た後にスマホでニュースを読んで、いろいろな出来事を知ることが多いです。 芸能ニュースは自分が知っている世界だけに「文字だけを信じてはいけない」と思っています。でも、自分の知らない世界は知らないことが多すぎて、ついつい記事のコメントまで読み込んでしまいます。違う角度の読み取り方ができるので、法律関係などは特に勉強になります。 ――たとえば? 子どもに関する記事は目に留まります。あとは今だと戦争について。関連記事やリンクをどんどん追っていくと眠れなくなってしまうこともあります。 ――今、戦争という言葉が出ましたが、不穏な今の時代、一人の母親として「平和」に思いを馳せることはありますか。 もちろんです。でも、それは親にそうやって育てられたことが大きいかもしれません。 俳優のお仕事をしていくなかで自分にできることは何か考えたとき、「誰かのため、何かのためにできることがあればやりたい」と思うようになりました。 ――お子さんともそういった話をすることは? 子どもたちもテレビで戦争のニュースを見ると「なんでこんなことするんだろう?」と素直に聞いてきます。そういうときは、どっちがいい悪いではなく「こっちにはこっちの主張があって……」と丁寧に説明するようにしています。 ――答えの出しにくい問題ですが、避けるのではなく、まずは話すことが大事ですよね。 そうですね。ただ、人それぞれの考えがありますが、言っていいことと悪いことはあると思います。口に出してしまうことで、言葉が言葉を生み、良くない感情を生んでしまうことはあるので。育児に限らず、人と人との付き合いのなかで自分が気をつけています。目の前の幸せ、相手の幸せを願うことが大きな幸せにつながるといいと思います。
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一家総出で子育て中
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株式会社ラーニャ代表取締役。ドラマや映画の執筆を行うライター。Twitter⇒@Yuichitter

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