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“頂き女子”りりちゃんを援護する声。なぜ被害に遭った“おぢ”が非難されるのか

かわいそうランキングで下位におかれる“おぢ”

もともと、ネットには「かわいそうランキング」という言葉がある。文筆家の御田寺圭氏が提唱した概念で、「人間にはかわいそうだと思ってもらえる順番がある」という意味だ。 私が上梓した新書『弱者男性1500万人時代』では、この「かわいそうランキング」をアンケートでつまびらかなものとした。そこで明らかになったのは、最もかわいそうなのは若い女性で、中年男性は同情されづらい事実だった。 アンケートでは、「ある殺人事件があったとして、その被害者がどのような人間だったらかわいそうだと感じるか」を順位付けしてもらった。条件は年齢・職業・男女で作ったが、結果として「最もかわいそうではない」とされたのが、50代・無職の男性だった。女性は無職であったり、年齢が上であっても同情されるが、男性は男性であるというだけで、かわいそうランキングの下位に置かれてしまったのだ。 その理由を書いてもらったところ「基本的に女性は弱い立場」「女性の方が弱い」と、女性を庇護しようとするコメントが目立った。まさに、頂き女子りりちゃんに対して投げかけられている言葉であろう。対して、男性はたとえ被害者であってもかわいそうではないとされる。これが、「弱者男性」の現状である。

頂き女子りりちゃんが狙った「弱者男性おぢ」

そして、頂き女子りりちゃんは弱者男性を‟おぢ”としてターゲットにした。マニュアルによると、お金を搾取できるおぢの特徴は「孤独で、趣味がなく、地位が低く、恋愛経験が少なく、借金をしたことがある」人である。ロマンス詐欺というと、あたかも金持ち男性からお金をせしめたかのように誤解されるが、実際には孤独でお金も少ない人間の、限られた資金を奪ったことがわかる。弱者女性が強者男性を利用して金銭を得ていたのではなく、さらなる弱者男性から搾取している地獄の構図なのだ。 それであるにもかかわらず、りりちゃんは擁護される。逮捕前には、りりちゃんとりりちゃんを信奉する女性たちが参加するチャットグループ(現在は削除済み)にて「自分たちの行為は詐欺ではない」と言い聞かせる声が相次いだ。なぜなら、かわいそうではない男たちに恋愛を匂わせるそぶりを与えているのだから、奪った金銭は正当な対価だと言いたいようだ。
頂き女子りりちゃん

マニュアルにならい、嘘の理由でおぢを騙し「お金が必要だ」と決定打を放つことを「魔法をかける」と呼んでいる

頂き女子りりちゃん

「やみえい」のため、「入院中の写真ないですか?」「〇〇円くらいのクレカの請求のスクショありませんか」などと、頂き女子内で画像を提供しあっていた

だが、冒頭で解説したとおり、嘘の事情で人にお金を使わせるのは、伝統的な詐欺の手法である。そして、頂き女子りりちゃんは成人であり、さらには自分の手口を有料販売することで詐欺を広めた悪質な犯罪者だ。 いま、りりちゃんを擁護する人は、かわいそうランキングに踊らされている人間である。そして、もっと言えば、ウブで純粋な、りりちゃんのような詐欺師から見て格好のターゲットと言えるだろう。
ライター、経営者。主にキャリアや恋愛について執筆。5000人以上の悩み相談を聞き、弱者男性に関しても記事を寄稿。著書に『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)『ハピネスエンディング株式会社』(小学館)。X:@10anj10

弱者男性1500万人時代 (扶桑社新書)『弱者男性1500万人時代』 (扶桑社新書)

データで読み解く“弱者男性国家”ニッポンの現在

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