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知らないと死ぬ「生水を“安全な飲料水”に変える」技術。ペットボトルでも代用可能

―[死なない技術]―
 人間が水なしで生きることができるのは72時間、つまり3日間しかない。アクシデントなどで3日以上、自力で生き抜かなくてならない状況では、3日以内に飲料水を確保しなければならない。そのために必要な、生水をより安全な飲料水に処理する方法を『災害からテロ、ミサイル攻撃まで まさか⁉の非常事態で「死なない技術」』 (扶桑社ムック)の著者で自衛隊危機管理教官の川口拓氏に解説してもらった。
死なない技術

『災害からテロ、ミサイル攻撃まで まさか⁉の非常事態で「死なない技術」』 (扶桑社ムック)

浄水器があればより安全な水が簡単に手に入る

 目の前にある水が安全かどうかを、見た目やにおいなどの人間の感覚だけで見極めることはできない。透明で無臭だからといって、その水が安全とは限らない。反対に茶色に濁っていても体に害がないということもあるのだ。  だから、どんな水でもまずは疑ってかかることが大切だ。そして、生水を何も処理をせずに飲むことは、できる限り避けなければならない。  生水を手っ取り早く飲める水にしたい場合に、最も簡単かつ安全な方法が浄水器によるろ過だ。最近では、使いやすく携帯性にも優れる浄水器がたくさん販売されている。ここでは私が実際に使っている2つの商品を紹介しよう。   信頼のおける浄水器があれば、長期に生存できる可能性が格段にあがるといっても過言ではない。ただし、浄水器にはさまざまなタイプがあるので、状況に合わせて使い分けなければならない。  ここでは私の独断で、アウトドア、都市災害用にチョイスしている。2つの浄水器は、それぞれの状況専用の製品というわけではないことをお断りしておく。

吊るしておくだけで水をろ過してくれるソーヤーの「スクィーズ フィルター」

 アウトドア用は「ソーヤー」というアメリカのメーカーの商品。米国環境保護庁(EPA)の基準を上回るろ過能力を持ち、有害な微生物やバクテリアをほぼ100%除去することができる。浄化スピードも早く、持ち運びもしやすいので、アウトドアに気軽に持ち出せる浄水器だ。

水筒代わりに持ち歩ける、セイシェルの「サバイバルプラス」

 都市災害用はセイシェルの商品。バクテリアやウイルスだけでなく化学物質や重金属まで除去可能。放射性物質も除去できるというから、都市部で使う場合にも心強い。また、その分析データをウェブサイトでしっかり公開していて、信頼性も高い。

さまざまな浄水方法を知っておくことで、より幅広い状況に対応できる

 どんな方法で生水を飲めるようにするか、そのための方法をいくつか知っておけば、そのときの自分の装備、状況に合わせて方法をチョイスすることができる。難しい方法もあるが、選択肢を多く持つというのはサバイバルにおいてとても大切なことだ。  たとえ除去が難しい化学物質に汚染されている恐れがある水しか手に入らない状況だとしても、何らかの処理をすることで「やらないよりはよくなる」ものだ。非常事態においてはそこに希望を持ち、生き延びる確率を少しでも上げるというマインドを持ち続けなければならない。  浄水する方法として、まず思い浮かぶのは煮沸とろ過だろう。どちらも、言葉だけなら簡単な作業のように思えるが、屋外で実際に行うとなると、それに伴って多くの道具や作業が必要になる。

火を起こすことができれば煮沸消毒ができる。ただし、水を温める容器など、必要な道具を入手する必要がある

 たとえば煮沸であれば、水をくんだり溜めておくための容器、火を起こすなどの煮沸するための熱源、火にかけられる容器、煮沸した水を汚染させないで飲むための容器なども必要になる。多くの浄水方法の手順や必要な道具を覚えておくことで、その状況に合った方法で、水を確保できる可能性を上げることができる。

煮沸とろ過のほかにも、水を浄化する方法がある。こういった知識を持っていれば、いざというときに選択肢が増える

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煮沸消毒とろ過の方法
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1990年代よりカナダ、アメリカのサバイバルスクールでサバイバル技術やネイティブアメリカンの古来の教えを学び、2001年にブッシュクラフトやサバイバルの技術を伝える自然学校「WILD ANDNATIVE」を設立。地球とのつながりを感じる自然体験プログラムを実施している。2013年に一般社団法人「危機管理リーダー教育協会」を設立。執筆活動、テレビや雑誌などのメディア協力も積極的に行い、技術を広く共有している。CMLEブッシュクラフトインストラクター養成トレーナー、Japan Bushcraft School校長、Japan Urban Survival School校長、自衛隊危機管理教官、自衛隊サバイバル教官
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