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“ユニクロの対極をいく”アパレル企業が、「創業から5年8ヶ月」で新規上場した納得の理由

「誰に売るブランドにするか?」を決めるために行うのは…

 この密度の濃いファンに支持されるブランド設計を、yutoriはNICOモデルと呼んでいる。NICOモデルで大事なのは、「誰に売るブランドにするか?」を決めることである。  なによりもまず、ターゲットを明確にし、その解像度を高くしてブランドコンセプトを考えるのだ。そこでまず、彼らはInstagramを見ながら、どこでどんなことをしている人に訴求する商品を作るかを決める。  例えば、「渋谷の道玄坂でスケボーをする19歳の男性4人組が好きなブランドを作ろう」と、明確にペルソナを決定してから、SNSでどんな投稿をするか? どんなインフルエンサーに投稿を依頼するか? どんな商品のデザインにするか? を決定する。  こうしたブランド作りのチームと、実際に商品を売るマーケティングチームが同社では分かれている。それにより、「確実に買ってくれる層」に刺さる商品を開発し、販売ができるのである。

顧客の棲み分けに成功した「北の達人」

   もし、あなたがここまで読んで「yutoriのブランドなんて一つも知らない」と思ったのならば、同社のマーケティング戦略は見事に成功していると言えるだろう。同じくyutoriと同様に、密度の濃いファンだけに訴求を行い、業績を伸ばしている上場企業の例を紹介しよう。  北海道札幌市に拠点を置き、健康食品や化粧品を自社ECサイトで販売している「北の達人コーポレーション」(以下、北の達人)がそれだ。  彼らが重視しているのは「顧客の棲み分け」である。これはyutoriにおける「密度の濃いファンだけに訴求すること」と同じ意味である。  ウェブマーケティングに興味を持つ若者の中で、「北の達人」は一定の知名度があるものの、「北の快適工房」という健康食品や化粧品のブランドはほとんど知られていないはずだ。
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棲み分けができず失速した「4℃」
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EC・D2Cコンサルタント、Amazon研究家、株式会社GROOVE CEO。慶應義塾大学環境情報学部卒業後、新卒採用第1期生としてアマゾンジャパン合同会社に入社、出品サービス事業部にて2年間のトップセールス、同社大阪支社の立ち上げを経験。マーケティングマネージャーとしてAmazonスポンサープロダクト広告の立ち上げを経験。株式会社GROOVEおよび Amazon D2Cメーカーの株式会社AINEXTを創業。立ち上げ6年で2社合計年商50億円を達成。Youtubeチャンネル「たなけんのEC大学」を運営。紀州漆器(山家漆器店)など地方の伝統工芸の再生や、老舗刃物メーカー(貝印)のEC進出支援にも積極的に取り組む。幼少期からの鉄道好きの延長で月10日以上は日本全国を旅している

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