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埼玉県川口市の在日クルド人が「街で大暴れ」は本当か?SNSで繰り返される人種差別の真相

トルコでのクルド人迫害はないという言説

川口市在日クルド人 岩本氏の話に戻る。Xでは「本国のトルコではクルド人への迫害はない」という言説が飛び交っているが、それは事実なのか。 「そういった言説がありますが、トルコのテロリスト認定の特殊性に関しては、英国内務省の『国別情報及び情報ノート』でも指摘されています。国や政権批判をしただけでも、政治犯として拘束される。それが迫害でなく、何なのか。彼らは、国に帰れば政治犯として不当に投獄されます」  また、日本では当たり前の、罪刑法定主義(いかなる行為が犯罪となり、それに対していかなる刑罰が科せられるかについて、あらかじめ議会が民主的に定める成文の法律をもって規定しておかなければならないという近代憲法の原則)をトルコ政府が軽視しているとの疑義が当然に生じる。 「国を持たない最大の民」といわれるクルド人はトルコ、イラン、イラク、シリアなどで暮らしているが、各地で少数民族として迫害を受けている。イギリスやアメリカなどはクルド人を難民として受け入れている。「日本の難民認定の基準は非常に厳しい。だから、彼らは難民認定されていないが、国に帰れば迫害の対象です」(岩本氏)。

景気が悪くなると広まる人種差別

川口市在日クルド人「こういった人種差別が広まる背景として。景気要因もあると思います。Xではフェラーリに乗った、ならず者のクルド人の話が拡散されているが、その人物は、日本クルド文化協会も把握しています。頭を抱えている。自分たち日本人が苦しい生活をしているのに、クルド人がフェラーリに乗っているなんてけしからんという気持ちがあるのではないか」  1923年9月1日に発生した関東大震災のときも「朝鮮人が井戸に毒を入れた」というデマが流れ、それを信じた軍人や市民により朝鮮人が虐殺された。不安や不景気などが背景となり、根拠のない話が拡散されることは100年前にも起きている。 「何も対策が打たれていないというが、2023年度(令和5年)の埼玉県の重要窃盗犯及び刑法犯及び重要犯罪の検挙件数の確定値は前年比で上がっている。それを逆手に取って、犯罪が増えているというが、検挙率の上昇は警察がきちんと機能している証です」
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改正出入国管理法が6月に施行
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立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1

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