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大手回転寿司チェーンが抱える“ジレンマ”。「ひと皿100円均一」からの脱却も、“強みを失う”結果に

堅調に推移するチェーンは「大手との差別化」に成功

大別すると先述した2タイプとなりますが、中別することで浮かび上がってくるのが、「ローカル系」という枠組。地域に根付いたチェーンを指すわけですが、実は明暗がはっきり分かれています。ここ数年で都心部に続々と進出する『トリトン』や『金沢まいもん寿司』は、高いクオリティが評判を呼び、すっかり市民権を得た印象があるでしょう。しかし、狭いエリアのなかで伸び悩み、右肩下がりで売上を落とすチェーンも存在するのです。 ポイントは「大手系との差別化」です。高価格帯の寿司を売ることとブランディングにしっかり取り組んできたところは伸びています。一方で大手系が「ひと皿100円」で伸びたときに、それに追随してしまったところは落ち込んでいます。 例えば大手系の場合、ネタの多くは業者で加工したものを仕入れて使用しています。店舗に握る技術、魚をさばく技術などの「職人力」を持ったスタッフがいるケースはほぼありません。一方でそんな職人力を担保できたところ、つまり大手ができないことをやってきたところは好調なのです。

仕入れの面でも小回りが利く

また仕入れについても、大手系とローカル系で差があります。大手系はスケールで仕入れますが、ローカル系は鮮度高く仕入れます。私たちの世界では、水揚げされたその日のうちに店頭に並ぶものを「DAYゼロ」と呼びます。水揚げからゼロ日という意味です。水揚げの翌日に並ぶものは「DAYワン」、さらにその翌日は「DAYツー」となります。 例えば水揚げ後に熟成させる必要があるマグロを除き、白身魚や青魚はやはりDAYゼロが強い。そうなると、市場などへ直接出向いて仕入れることのできるローカル系にとってはこの部分が強みになるのです。店内で魚をさばける、握れる、残ったアラなどをからとった出汁で味噌汁を作れる、こういった大手系ができないことで勝負するローカル系は今後も伸びていくでしょう。
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『スシロー』『くら寿司』と『はま寿司』『かっぱ寿司』で異なる事情が
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1993年創業の外食産業専門コンサルタント会社:株式会社ブグラーマネージメント代表取締役。これまで19か国延べ11,000店舗のコンサルタント実績。外食産業YouTube『永田ラッパ〜食事を楽しく幸せに〜』も好評配信中。

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