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大手回転寿司チェーンが抱える“ジレンマ”。「ひと皿100円均一」からの脱却も、“強みを失う”結果に

『スシロー』『くら寿司』と『はま寿司』『かっぱ寿司』で異なる事情が

国内市場が飽和状態になったことで、大手系は今後、海外展開で状況を打開していくことになるでしょう。その場合、同じ大手系4社でも、寿司専門で展開してきた『スシロー』『くら寿司』と、コングロマリット企業(異なる業種の企業同士の合併や買収などで成長してきた企業)である『はま寿司』『かっぱ寿司』とでは、少し事情が異なります。 『スシロー』『くら寿司』は早くから海外展開に取り組んでいます。 『スシロー』は2012年ごろに韓国に進出し、その後は台湾と香港に出店して大成功をおさめます。1店舗あたりの売上が国内店舗よりも大きいところもあるほどです。これをきっかけに、現地では大型店舗で、寿司以外のサイドメニューを充実させ、寿司を軸とした「ファミリーレストラン」化に舵を切ることで中国本土やインドネシア、タイ、フィリピン、シンガポールなどで着実に伸びてきています。 『くら寿司』は2009年にアメリカ、2014年には台湾に出店。アメリカ・台湾という市場に集中して展開することで、こちらも着実に店舗を拡大させています。そして、2023年には中国本土にも1号店をオープン。中国では「10年で100店舗」を目標にしているようですが、巨大市場への進出が吉と出るか凶と出るか、興味深く見守りたいものです。 『はま寿司』『かっぱ寿司』は企業としては海外展開は進めているものの、回転寿司ではやや出遅れている印象があります。今後の動きに注目といったところです。 国内市場が飽和状態であれば、海外に目を向けるというのは自然な流れです。「売れる場所で店を出す」というごくシンプルな話なのです。売上比率において、海外が国内を上回るほどの状態を目指すべきでしょう。

“多ブランド化”に注力する『スシロー』

ちなみに、海外事業以外でいうならば、近年『スシロー』は“多ブランド化”にも注力しています。持ち帰り寿司の『京樽』、寿司居酒屋の『杉玉』などをM&Aで手に入れており、既存のチャンネルと重複しない事業展開によって、現状を打破したいのかもしれません。 回転寿司は私たちにとっては実用食であり、日常の飲食店。メニューも豊富で、エンタメ性のあるお店もあり、行けば食べること以外にも楽しさがあります。 “グルメ界の日本代表”として様々な国で人気を博してくれたら、こんなに嬉しいことはありません。海外を旅行した際、現地仕様にローカライズされたメニューを試してみるのも、きっと面白いと思います。 <TEXT/永田ラッパ>
1993年創業の外食産業専門コンサルタント会社:株式会社ブグラーマネージメント代表取締役。これまで19か国延べ11,000店舗のコンサルタント実績。外食産業YouTube『永田ラッパ〜食事を楽しく幸せに〜』も好評配信中。
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