熊本県「天然地下水100%が企業誘致の呼び水」に。行政が“サウナ振興”に取り組むワケ
中年男性の憩いの場だったサウナは、近年のブームで国民的なリラクゼーション施設へと昇華した。この波に乗っかろうと、産業振興の呼び水として、行政が地域ぐるみで「サウナ振興」に取り組んでいる自治体がある。熊本市だ。“火の国”熊本のアツいサウナ事情とは?
日本最南端の政令指定都市・熊本。町のシンボルで、西南戦争で西郷隆盛の猛攻を退けた熊本城は、2016年の熊本地震で石垣が崩れ落ちた。その後の復興作業で天守閣は2021年に完全復旧し、昨年度は7年ぶりに観光客が100万人を突破。町は賑わいを取り戻している。
半導体受託生産の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第1工場が今年、熊本県菊陽町に開所し、県内での半導体バブルへの期待が高まる中、熊本市では、県内スタートアップ支援やスタートアップ企業の誘致にも力を入れている。担当している起業新産業支援課の野口信太朗課長が声を弾ませる。
「新型コロナによって浸透したリモートワークの影響で、IT系などを中心に熊本での創業を考える起業家の方が多数いらっしゃって、起業家の発掘・育成、首都圏企業の誘致に向けたセミナーを開いています。その際に、熊本の魅力としてサウナを推しているんです」
熊本市の西にそびえる活火山の阿蘇山では、日本国内の年平均降水量1700ミリを大きく超える3000ミリもの雨が降り注ぎ、マグマを冷やし、草木を潤わす。このおびただしい雨水は、10年以上の歳月をかけてミネラルや炭酸分を含んだ伏流水となって熊本市に流れ着く。市内の水道水は100%地下水だ。
この地下水を求めて、半導体企業の工場が進出し、そしてサウナーも集まってくるのだという。
「水質が良いので、半導体メーカーが多いんです。飲料水としての良質さはもちろんのこと、サウナ後に浸かる水風呂も地下水なので、まろやかで肌触りの柔らかい水質が楽しめます。誘致の際には、サウナのパッケージツアーも企画して、参加者の方に市内のサウナを楽しんでもらっています」
自身も30年来のサウナーで、「サウナ公務員」との二つ名で、X(@sarubutarou3)で情報発信している野口課長がツアーの段取りを組む。
定番として組み込んでいるのが、西の聖地とも称される「湯らっくす」(中央区本荘町)。アウフグースイベントが行われるクラシックサウナ、一筋の光だけの暗室で無の境地に達するメディテーションサウナ、大量の蒸気に包まれる大阿蘇大噴火瞑想サウナの三種を用意。水風呂は8人ほどが入れるほどの大きさで、備え付けの「MADMAX」ボタンを押すと、大量の滝が脳天を直撃し、命綱を握って耐え忍べば強烈なととのい感を味わうことができる。
また、老舗旅館の別館に昨年オープンした「湯屋水禅」(同区水前寺)も野口課長の一押し施設。熊本出身の放送作家・小山薫堂さんが「湯道百選」に選出し、和のテイストを打ち出して、木材がふんだんに張り巡らされているのが特徴。サウナストーンには、阿蘇の溶岩石を使用し、火の国の熱気を全身で受け止められる。
阿蘇山系の伏流水が極上の水風呂に!
サウナー課長がツアーを企画
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