仕事

「白目の面積を大きくする整形手術を受けた」37歳女性がお化け屋敷で“驚かせること”に人生を賭けるまで――仰天ニュース傑作選

ゲームメーカーに就職。憧れのゲームにも携わる

今出彩賀氏

岩名謙太氏と

 寝ても覚めてもホラーゲーム制作の勉強に没頭した今出氏は、厳しい指導にも耐え抜き、志望していた企業からオファーをもらうことができた。ゲームクリエイターとしての今出氏はまさに順風満帆。一度の転職を経験したそのトータルキャリアで、憧れのゲームにも携わることができたという。 「『零 月蝕の仮面』『ロリポップチェーンソー』『シャドウオブザダムド』『VRホラー 囁き』など、ありがたいことに比較的有名なホラーゲームに携わらせてもらえました。自分が学生時代にプレイしたこともあるシリーズなどに関わるのは高揚感がありましたね」  だがそのキャリアをゼロにしてまで、今出氏はアナログなお化け屋敷制作の道を進む。そのきっかけは衝撃的なものだった。 「(東京都杉並区)方南町に『オバケン』という有名なお化け屋敷があります。当時最先端だったVR制作の参考になればと思い、訪れたその場所で、生身の人間が演じるお化けのあまりの怖さに私は打ちひしがれ、同時に羨望を覚えました。私たちはリアルに見えるデジタルツールを開発していましたが、実体がそこにあるお化けの臨場感や迫力には、どうしても勝てないと思ってしまったんです。そのまま、演じていた岩名謙太に弟子入しました」

家賃が払えず、キャバクラで働くことに…

 現在でこそ怖がらせ隊のお化け屋敷プロデューサーとして君臨する岩名氏だが、当時はまだ大学生。しかし圧倒的な演技力に魅了され、ホラーゲームクリエイターとして成功を収めつつあった今出氏はプライドもキャリアもあっさり捨てた。 「私はすぐに退職し、岩名とほか2名と一緒に、お化け屋敷制作の制作団体を立ち上げました。4人でルームシェアをしながら、オンボロ一軒家で生活しながらひたすらお化け屋敷を作る生活です。しかし想像に難くないと思いますが、そんな生活がうまくいくはずもありません。貯金はあっという間に底を尽き、貯金どころか家賃を払えなくなりました。生活が困窮し、仲間は一人離れ二人離れ、気づけば岩名とふたりきり。ご飯も梅干しとわずかな白米だけで何回もやり過ごしました」  生きていくため、お化け屋敷以外での収入も必要だった今出氏は、水商売も経験した。 「キャバクラに勤務して、業務が終わったらまた違う店舗で朝キャバをやったり……私は何をやっているのかなと(笑)。今でこそ笑い話ですが、当時は本当に精神を病んでしまいました。心配した父親から『大丈夫なのか?』と電話がかかってきて、『大丈夫にするしかないじゃろ!』と怒鳴ったのをよく覚えています」
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「お化け役の控室」にブルーシートを敷いて暮らすことに
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ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

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