仕事

ボーナスをもらえない非正規スタッフたちの怒り「正社員と一緒に働くのがバカらしくなる」――仰天ニュース傑作選

 先述した正社員とそれ以外の「格差」、そして「弊害」はすでに社会に影響を及ぼしているのではないかとすら思えるエピソードを語ってくれたのは、都内の中堅情報企業で働く、非正規社員の奈良さん(40代・仮名)だ。  奈良さんは、非正規社員にもかかわらず、社員や非正規社員の勤怠管理を行う労務部に籍を置く。 「7月と12月のボーナス期、若干ですが非正規社員が会社を休みやすい傾向にあります。また、財務部や経理部、営業部などのデータを総合して見比べてみると、この時期、非正規社員の生産性が明らかに下がっているのがわかります。『正社員はボーナスをもらえるのに、私たち非正規はもらえない』と腐ってしまっていることにほかなりません。かくいう私も、この時期は正社員に交じって仕事をするのがバカらしくなり、サービス残業などを堂々と断ったりしますが、のど元過ぎれば……で。ボーナス時期が終わると、結局せっせと働かざるを得なくなる」(奈良さん)
ボーナス

非正規スタッフの多い職場では、ボーナスの話はタブーとも言える。隣の人間が奥歯を噛み締めている場合だってあるのだ

 また、港区のWebコンテンツ制作会社で業務委託として働く山本さん(30代・仮名)がこう憤る。 「我が社は管理職が社員で、実制作を担っている大半の人間が業務委託。フロアではボーナス期の少し前から社員たちの間で『数字のノルマを大幅に超えて、来月はボーナスをたくさんもらおうぜ!』とか意気込む声が聞こえてきます。こちらにノルマのプレッシャーをかけてきたり、休日出勤を強いられたりするのですが、ボーナスがもらえない我々にとっては、頑張る意味がわからない。うま味があるのは社員だけ。にも関わらず、配慮のない発言を平気でする社員たちに怒りすら覚えます。そりゃ、手を抜きたくもなりますよ」(山本さん)  正規ー非正規は、もはや“階級制度”と化している。その最たる例が「ボーナスの有無」だと言っても過言ではないだろう。

新しい法律で「非正規にもボーナス」時代が来るか

 ただ、変化の兆しもある。2018年6月に成立した「働き方改革関連法」は「同一労働・同一賃金」を掲げていて、ボーナスについても正社員と非正規雇用者を同じ扱いにするようガイドラインを出している。大企業は2020年4月、中小企業は2021年4月から、これに沿った賃金システムに変えなければいけないのだ。  もっとも、企業とはありとあらゆる抜け道を考えるもの。2~3年後に、晴れて非正規雇用者もボーナスをもらえる日が来るかは、まだわからない――。 <取材・文/山口準>
新聞、週刊誌、実話誌、テレビなどで経験を積んだ記者。社会問題やニュースの裏側などをネットメディアに寄稿する。
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