スニーカーのインソールを変えるだけで「靴の機能は劇的にアップ」する。“初心者が買うべき”一足とは
こんにちは、シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)です。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。
昨今のスニーカーブームから波及して、インソールが注目を集めています。インソールとは、その名のとおり靴の中に入れる中敷きを指しますが、従来のものが主にサイズ調整に使われていたのに対して、現在は主に機能調整に用いられます。ひと昔前は、単に靴をきつくするためのモノでしたが、役割が靴と身体の性能を100%により近く発揮させるものに変わったのです。マウスピースはかつてボクシングのみで使われていましたが、歯を食いしばって力を発揮できるようにと、バスケや野球、サッカー、卓球などのスポーツにおいてもあたりまえのように使われるようになりました。かみ合わせがハマると、体の動きの正確性とパワーの出力が段違いに向上するからです。インソールはいわば足のマウスピースと言っていいでしょう。
スポーツ分野から誕生した高機能インソールは、薄くて軽く、頑丈で使いやすいため、メガスポーツショップやニューバランスなどの店舗でも販売員からインソールの組み合わせの提案を受けることが日常になってきました。靴、とくにスニーカーには、はじめからインソールが入っているのに、新たにお金を出してまで取りかえるのは、シューズの性能がアップするからです。
筆者はインソールマニアです。数えきれないほどのインソールを試し、自分で改造することもしばしば。靴とインソールの関係は、焼き鳥にビール、カレーに福神漬けのようなもので、なくてもいいけど、あると相乗効果で何倍もおいしくなるような存在です。
例えば、しっくりこない靴があったときに、ショップにある高機能インソールを組み合わせてみてください。意外と一発で決まります。なんだか靴が合わない原因は、カカト幅や、ふまず長が合わないことがほとんど。靴の試着は、つま先は意識が向きやすいのですが、カカトの幅や重心の位置は無視されます。Eとか3Eなどウィズやサイズは最低限の情報で、重心のかかるシューズの後ろ半分をないがしろにすると絶対にフィットしません。数千円のインソールがひとつあるだけで、靴のフィット感や歩き方、疲れ方にまで影響が及ぶのです。
高機能インソールには種類がたくさんありますが、スニーカーにはスポーツを研究したド定番メーカーが正解。フランスのシダス、日本のバネインソール、アメリカのスーパーフィートが安定して良品を販売しています。どのジャンルでも、プロのアスリートはこれらの専用インソールに差し替えて使用しています。自分用のインソールで靴との一体感が増し、クッション、スピード、細かいコントールの効きが向上し、靴の機能をフルに発揮できるようになります。加えて、ケガの予防にもつながります。NBAのファンサービスでよく試合後のシューズを観客にプレゼントする風景がありますが、よく見るとインソールだけは抜いています。シューズは大量生産品なのでスポンサーから与えられますが、インソールはシーズンを通して使うものなので、靴よりはるかに重要です。費用と時間、技術が必要なので、いわば財産なのです。とはいえインソールは製造のハードルが靴よりも低いので、良心的な製品から、いわゆるぼったくりに近いものまで乱立しているのが現状です。
筆者が考える、よいインソールとは以下の条件を満たしたものになります。
①硬いこと。インソールが足のマウスピースとして役立つには、指で押してへこむようなヤワヤワなインソールでは意味がありません。スニーカーにもとから入っているようなインソールや、3000円以下の製品の大半がこれに該当します。インソールをひっくり返した時に、カカトから全体の半分くらいまでは、硬いパーツで覆われていることが絶対条件です。
②軽いこと。かつては「よいインソール=コルク製」というのが常識でした。しかし、コルクは加工がしやすいものの、圧縮しなければ強度が出ないため、インソールにすると重くなります。しかも劣化が早く、数年でボロボロと崩れ落ちるのも難点。今ではサーモプラスチックやカーボンなどの、より軽くて強く、しなやかな素材が主流となっています。
③手に入りやすいこと。わざわざ専門店に足を運ばなくても、ゼビオなどのメガスポーツ店に行くと手に入るということも重要です。オンライン販売のみのインソールには眉唾なものが多く、実物を手に取って、サンプルを足に入れて、その場で買える。その場で買って帰れることが実は重要なのです。
靴とインソールの黄金バランスで「なんかちがう」も解消できる
インソール選び3つのポイント
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イギリスのノーサンプトンで靴を学び、20代で靴の設計、30代からリペアの世界へ。現在「全国どこでもシューフィッター」として活動中。YouTube『足と靴のスペシャリスト』。靴のブログを毎日書いてます『シューフィッター佐藤靖青(旧・こまつ)@毎日靴ブログ』
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