ゴミ屋敷で“父の遺体”と暮らしていた50代息子。特殊清掃員が見た、死体遺棄事件に潜む“貧困”の実態
特殊清掃員、遺品整理士、そして真言宗僧侶の亀澤範行と申します。2007年に「関西クリーンサービス」を創業し、これまで10万件以上の特殊清掃、遺品整理、ゴミ屋敷清掃の現場に携わってきました。特殊清掃の現場で起こっている問題に真正面から向き合い、社会に警鐘を鳴らすべく、YouTubeチャンネル「関西クリーンサービス」(チャンネル登録者数16万人)で発信を続けています。
2023年6月、ある事件が大阪府東大阪市で起きました。同居する父親(80代)の遺体を自宅に放置したとして、息子(50代)が死体遺棄の容疑で逮捕された事件です。現場となった部屋の特殊清掃を担当したのが弊社でした。
警察の取り調べに対し、「死んでいるのがわかっていて放置した」と容疑を認めた息子さん。親子に一体何があったのか。清掃現場で見えてきたのは、貧困と孤立化が生んだ悲劇でした――。
事件発覚後、物件オーナー様からご依頼いただき、死体遺棄が発生した部屋の下見に訪れました。現場は3階建ての古いアパート。建物に足を踏み入れた瞬間、これまでの経験から「この物件は危ない」と直感が働きました。
築50年以上の鉄筋コンクリート造り。その建物の内部は昼間でもとても暗く、共用部分の空気がじめじめとしていて、「まるで刑務所のような雰囲気だな」と思うほど。建物がこんな状態では、住人の心にも悪影響を及ぼしかねません。
プライベートな空間や、それを取り巻く物件の環境は、住む人の精神状態を写し出す鏡のような存在です。心が荒れると部屋も荒れてしまい、部屋が荒れると心もまた荒れてしまう。住環境と精神状態は、相互に作用します。
現場の玄関を開けてみると、強烈な臭いが鼻を突きました。1DKの室内はゴミ屋敷状態で、段ボールや白いゴミ袋がぎゅうぎゅうに積まれています。
玄関先のゴミとゴミの間の狭いすき間に敷かれた布団。故人のご遺体はそこで発見されました。
発見時には死後2週間が経過しており、腐敗が進んでいる状態だったそうです。そのご遺体とともに、息子さんは2週間暮らしていました。
部屋の中にはファブリーズの空容器が大量に散乱していました。息子さんは腐敗していく父親の遺体にファブリーズをふりかけ、死臭をごまかそうとしていたそうです。
入室した際の凄まじい臭いは、ファブリーズの香りと腐敗臭が混ざったものでした。死後2週間かつ高温多湿の梅雨の時期となると、ご遺体は腐敗が進んで、液状化している状態です。そこにファブリーズをふりかけると、常人には耐えきれないほどの臭いが発生します。
さらに、ご遺体の口や目、耳には、トイレットペーパーが詰められていたそうです。体液や、腐敗していくご遺体の内臓からあふれ出てくるウジ虫を止めるためでしょう。
放置された遺体には、臭いに誘われてハエが集まり、耳・目・鼻などの暗い穴の中に卵を産みます。卵からかえったウジ虫は、エサとなる死肉を求めて内部に入り込みます。そしてサナギになる頃、乾いた場所を求めて体内からうじゃうじゃとあふれ出してくるのです。
流れ出る体液や汚物などをタオルや雑巾で拭きとっていたらしく、汚染された布類がトイレに敷き詰められていました。
死体遺棄現場で見た凄絶な光景

重苦しさが漂う暗い廊下。「怖い物件だな」と感じたのを覚えている

警察が現場検証の過程で、部屋のゴミを袋詰めにしたと思われる
発見時には死後2週間が経過しており、腐敗が進んでいる状態だったそうです。そのご遺体とともに、息子さんは2週間暮らしていました。
遺体にファブリーズを…

部屋に残された容器には、鑑識が指紋を採取する際に使う黒い粉がべっとりと付いていた

遺体が横たわっていた周辺には体液が広がり、床が汚染されている

遺体から出る液体をなんとか吸わせようとしたのか
1980年生まれ、大阪出身。A-LIFE株式会社代表取締役。祖母の遺品整理を経験したことで、遺族の心労に寄り添う仕事をしたいと考え、2007年より個人商店として「関西クリーンサービス」を創業。2010年にはA-LIFE株式会社を設立し、本格的に遺品整理・特殊清掃の事業を開始する。YouTubeチャンネル「関西クリーンサービス」にて孤独死・ゴミ屋敷・遺品整理の現場を紹介し、社会に警鐘を鳴らし続けている。X:@KAMESAWA_Kclean
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