年収2000万円から転落した40代男性。タワマン3LDKが“ゴミ屋敷”に変貌、実家に戻るまでの一部始終
特殊清掃員、遺品整理士、そして真言宗僧侶の亀澤範行と申します。2007年に「関西クリーンサービス」を創業し、これまで10万件以上の特殊清掃、遺品整理、ゴミ屋敷清掃の現場に携わってきました。特殊清掃の現場で起こっている問題に真正面から向き合い、社会に警鐘を鳴らすべく、YouTubeチャンネル「関西クリーンサービス」(チャンネル登録者数15万人)で発信を続けています。
近年、“働き盛り世代のゴミ屋敷案件”が増えています。今回ご紹介する現場のご依頼者さまも、40代の男性でした。現場はなんと駅直結のタワーマンション。3LDKの90平米近い部屋が、ありとあらゆるゴミで埋もれていました。
かつては営業マンとして、年収2000万円を稼いでいたそうです。彼がゴミ屋敷の住人になってしまったきっかけは、何だったのでしょうか。
依頼を受けて初めて現場に訪れたとき、私は思わず息を飲みました。想像していた「普通の片付け作業」とは、かけ離れた光景が広がっていたからです。
目の前には、天井近くまで積み上がったゴミの山。現場に向かう前は、駅直結という立地の良さや、タワーマンションという高級感から、「家財道具の片付けだろう」と考えていました。しかし、高さ2メートルほどのゴミに埋もれた部屋を見て、ただ事ではないと察しました。
どの部屋も似たような状況で、ゴミの上を踏みながら進むしかありません。とても生活できる環境ではなく、ご依頼者さまによれば、このゴミの上で寝起きしていたそうです。その証拠に、わずかに生活の痕跡を感じさせる窪みがありました。
ゴミ屋敷では、ハムスターの巣のような、人ひとりがすっぽり収まる窪みが部屋の中に作られていることがあります。そこが住人にとって生活の定位置となっているのです。
積み上げられたゴミの大半が、雑誌や本、マンガなどの紙類でした。紙類は量が多くなると驚くほどの重さになるため、清掃作業ではもっとも厄介な存在です。現場によっては、何トンもの紙類が出てくることもあります。
衛生状態が劣悪なゴミ屋敷では、食べ残しの入った飲食物の空き容器が無造作に放置されがちです。今回の現場では、生ゴミが袋にまとめられており、散乱していた新聞が床を保護する役割を果たしたため、フローリングは比較的きれいな状態でした。
特徴的だったのは、通販の梱包資材の多さです。「人に会いたくない」とネット通販を利用して生活されていたため、あちこちに段ボールの空箱が散乱していました。
ゴミ屋敷の住人には、「一見社会生活を送れているように見えるが、自宅はゴミ屋敷」のパターンと、「何かしらの理由でひきこもりになり、ゴミ屋敷になった」パターンがあります。
この“ひきこもり系ゴミ屋敷住人”の場合、生活用品や食料の調達をネット通販やデリバリーで済ませる人が多く、今回のように段ボールが積み重なりがちです。人と接触したくない・家から出たくないといった理由から、置き配を利用される方ばかり。なかには、「人とすれ違う可能性があるから、宅配ボックスすら使いたくない」という人もいました。
通販やデリバリーの梱包材で部屋が埋め尽くされている“通販系ゴミ屋敷”の事例は、コロナ禍以降、増加傾向にあると感じています。
4日間かけて、4トントラック7台分のゴミを回収しました。作業でもっとも苦労したのは、ゴミの搬出です。マンションにはエレベーターが3基ありましたが、ご依頼者さまからの「近隣住民や管理人にバレないようにしてほしい」という要望に応えるため、目立たず、占領しないよう配慮。1階から27階を何度も往復する作業が、いちばん大変でした。
高級タワマンの内部で何が?天高く積み上がったゴミの山


紙ゴミに埋もれた生活

新聞やチラシが何層にも重なっている

1980年生まれ、大阪出身。A-LIFE株式会社代表取締役。祖母の遺品整理を経験したことで、遺族の心労に寄り添う仕事をしたいと考え、2007年より個人商店として「関西クリーンサービス」を創業。2010年にはA-LIFE株式会社を設立し、本格的に遺品整理・特殊清掃の事業を開始する。YouTubeチャンネル「関西クリーンサービス」にて孤独死・ゴミ屋敷・遺品整理の現場を紹介し、社会に警鐘を鳴らし続けている。X:@KAMESAWA_Kclean
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