「人気通貨」豪ドルの短期的リスクの「正体」とは?
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個人投資家に人気の高い豪ドルは、6月1日の安値から、2か月半程度で対円、対米ドルともに1割以上の上昇となりました。そこで今回は、この「豪ドル高の行方」について考えてみたいと思います。
最初に結論を述べます。一部には豪ドル売り介入警戒感も浮上しているようですが、さすがにそれは1豪ドル=1.1米ドルを大きく超える豪ドル高となった場合の話ではないでしょうか。ただ、経験的には豪ドル「買われ過ぎ」限界圏に達していることは間違いないため、その反動は要注意ではないでしょうか。
◆買われ過ぎの限界圏に突入
豪ドルは、6月1日には74円台、0.95ドル台の安値をつけました。6月中旬のギリシャ再選挙を控え、世界の金融市場が異例の「不確実性」の前にリスク回避を進めていた局面でのことです。
そんな豪ドルは、8月に入ると83.5円、1.06ドルまで反発しました。ほんの2か月程度で、対円、対米ドルともに1割以上の大幅な上昇となったわけです。ただ、さすがにそういった中で、豪ドルの「買われ過ぎ」懸念も強くなっているようです。
CFTC統計というデータで豪ドルのポジションを調べてみると、8月21日現在で、買い越しが8.6万枚に拡大しました。この統計で、豪ドルの買い越しが9万枚を超えたことはほとんどなかったので、その意味では過去最大規模の買い越しとなってきたわけですから、経験的には豪ドルの「買われ過ぎ」警戒域に入っているといえるでしょう。
◆半年で2割動いたら介入
また、ここに来て豪ドル高の行き過ぎをけん制する発言が目立ち始めたことも、市場関係者が気にする要因になっているようです。では、政策当局の豪ドル高懸念はどのように考えればよいのでしょうか。
今年最初に、豪州の中央銀行であるRBAの豪ドル高懸念が注目されたのは、2月初めでした。RBAは2月7日に発表した声明のなかで、「交易条件の悪化にもかかわらず、豪ドル相場は上昇してきた」「豪ドル高は、RBAの従来の想定を少し超えてきた」との認識を示したのです。
この声明が発表された当時の豪ドル相場は82円、1.07ドルでした。対円はともかく、対米ドルで1.07ドルに豪ドル高が再接近してきたことに対し、豪ドル高をけん制する動きが再燃してきたのは、このように見るとわかりやすいといえるでしょう。
では、この1.07ドルを超えて豪ドル高が進むようなら、政策当局が豪ドル売り介入に動く可能性はあるのでしょうか。
専門家の間では、豪州の外貨準備の増減などから、半年程度の一定期間内に豪ドルが一方向に2割以上動くと為替介入に動いたとの理解が基本になっているので、それを参考に考えてみましょう。
上述のように、6月1日の安値から、豪ドルは短期間に比較的大幅な上昇となっていますが、それでもまだ上昇率は1割です。6月安値から2割の豪ドル上昇なら1.14ドル程度といった計算になります。その意味では、本格的な豪ドル売り介入の可能性が出てくるのは、やはり1.1ドルを大きく超えて豪ドル高が進んだ場合なのではないでしょうか。
【吉田 恒氏】
1985年、立教大学文学部卒業後、(株)自由経済社(現・(株)T&Cフィナンシャルリサーチ)に入社。同社の代表取締役社長などを経て、2011年7月から、米国を本拠とするグローバル投資のリサーチャーズ・チーム、「マーケットエディターズ」の日本代表に就任。国際金融アナリストとして、執筆・講演などを精力的に行っている。また「M2JFXアカデミア」の学長も務めている。
2000年ITバブル崩壊、2002年の円急落、2007年円安バブル崩壊など大相場予測をことごとく的中させ話題に。「わかりやすい、役立つ」として、高い顧客支持を有する。
著書に
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