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【将棋電王戦直前】最強ソフトにアマ1000人が力を合わせて挑戦

 今年もまた、この季節がやってきた。最も将棋が強い人類であるプロ棋士とコンピュータが雌雄を決する『第3回 将棋電王戦』が、いよいよ今週末の3月15日に開幕する。この注目の五番勝負を目前に控えた前哨戦として、ニコニコ生放送では視聴者参加型の対局イベント「力を合わせて電王を倒そう!全視聴者 vs ponanza」および「電王ponanzaに勝てたら賞金100万円!!」が3週にわたって行われた。

 電王戦に登場するコンピュータは、いったいどのくらい強いのか。その片鱗をうかがい知ることができる貴重な機会となった2つのイベントをレポートする。

⇒【画像】はコチラ http://nikkan-spa.jp/604613/denou3pss_1

◆人間の多数決はコンピュータに勝てるのか!?

 2月26日に放送された「力を合わせて電王を倒そう!全視聴者 vs ponanza」は、ニコニコ生放送のコメント機能を使って視聴者が将棋の指し手を投票し、多数決でコンピュータと戦うという珍しいイベントだ。対するponanzaは昨年11月の『将棋電王トーナメント』に優勝。『第3回 将棋電王戦』の大将戦に登場予定で、現在最強の将棋ソフトである。

 今回のコメントによる指し手の投票システムは、将棋ソフト開発者でニコニコ生主のえびふらい氏が開発した「おきあみちゃん」を使用。えびふらい氏が主催した昨年のイベントでは、視聴者がプロ棋士・西尾明六段をあと一歩というところまで追い詰めたこともある。

※リスナー多数決でプロ棋士に挑戦「ニコニコ超将棋会議」観戦記
http://nikkan-spa.jp/467826


 当然、視聴者には将棋が強い人だけでなく、弱い人も多く含まれる。しかし、お互いにコメントで読み筋をやりとりしたり、手元の盤駒を使って実際に局面を並べながらみんなで考えれば、強い人ひとりで考えるよりも良い結果が出る可能性もある。少なくとも簡単な見落としを未然に防いだり、ほかの人に気づきにくい手を指摘してもらうという点では、有効な方法だと考えられる。

 問題は視聴者の意見をうまくマネジメントできるかどうか。まとまりに欠けてしまったら、視聴者はあっという間に烏合の衆となる。今回は公式放送なので、システム担当のえびふらい氏だけでなく解説に西尾六段、聞き手に飯野愛女流2級もいる。これらがどう影響するのか。

ponanza

アンケートではアマ初段以下の視聴者が7割を占めていた。普通に考えれば、とてもponanzaには勝てそうにないが……

 実際の放送では、対局の最初から最後まで1000人前後の視聴者が指し手の投票に参加していた。これは前回のイベントの軽く10倍を超える人数だ。こうなると、なおさら意見をまとめるのは難しい。

「こんな(にたくさん投票されている)の見たことないです! システム的には、このくらいの人数ならたぶん……大丈夫です」(えびふらい氏)

「ちょっと指し手の意味とかを言うと、すぐ順位が上がってきちゃうんで解説が難しいですね(笑)。あんまりしゃべると僕が指してるみたいになりますし。できるだけ、みなさんに考えてもらうようにしたいんですけど」(西尾六段)

衆愚政治

まだ序盤なのにネタで「投了」を投稿するユーザーが急激に増えたところ。もちろん西尾六段が却下。なんという衆愚政治

 将棋は相矢倉の定跡形に。このあたりも視聴者が一番指しなれたポピュラーな形に落ち着いたと言えるだろうか。ただし、普通の相矢倉だと先手(本局の場合は視聴者側)が先に攻める展開が多いのだが、後手のponanzaがちょっとしたスキを突いて駒損しながら機敏に攻め始める。

「コンピュータはこういう手が好きなのを指摘するのをウッカリしてました。厳密にはちょっと強引な攻めでも、人間がそれを受けきるのは難しいんですよね……」(西尾六段)

「序盤でもう少しじっくり考えたほうが良かったかもしれないですね……」(えびふらい氏)

 序盤から中盤の入り口あたりで、ponanzaの評価値は500程度に。ponanzaが言っていることが完全に正しいかどうかはわからないのだが、画面には悲観的なコメントが頻繁に流れ始める。こうなると勝負としては難しい。視聴者側はponanzaに一方的に攻められ、それをなんとか受け続けるという苦しい展開に。やはり将棋は攻めるほうが楽しいのだ。

 結果から言えば、この将棋は視聴者側がそのまま押し切られて負けとなった。しかし、中盤以降は視聴者側が粘りを見せ、攻めのターンが1度だけ回ってきたときには「思い出王手」をかけたり、ponanzaが受け間違ってくれれば勝ちがあるという瞬間もあった。

 筆者的には、運営も視聴者も不慣れなシステムの初の大規模運用で、かつ7割以上がアマ初段以下という状況で、ponanza相手にこの将棋の内容なら善戦と言ってよいのではないかと感じた。集合知の可能性を考える上でも興味深い実験的なイベントなので、今後も試行錯誤をくり返しつつ、何らかの形で続けてほしいと思った次第である。

 それにしてもponanzaは強い。1000分の1の投票権しかないとはいえ、実際に対局に参加してみると、次々と波状攻撃が襲ってくる絶望的な感覚など、その強さをより生々しく体験できることもある。あらためて、これに一人で戦って勝つということは並大抵のことではないと感じられた。

⇒【後編】へ続く「電王戦大将ソフト開発者 結婚資金100万円を賭けて対決」
http://nikkan-spa.jp/604614


◆力を合わせて電王を倒そう!全視聴者 vs ponanza – ニコニコ生放送
http://live.nicovideo.jp/watch/lv169360433

◆将棋電王戦 HUMAN VS COMPUTER
http://ex.nicovideo.jp/denou/

<取材・文・撮影/坂本寛>

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