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ワルたちの格闘技・アウトサイダー初の“女子対決”【完全リポート】

THE OUTSIDER

大会パンフレットより抜粋。格闘技歴、コメントが対照的で面白い

 格闘王・前田日明が主宰する不良の格闘技大会「THE OUTSIDER」(以下アウトサイダー)。暴走族、チーマーなどの不良が一堂に介して“喧嘩日本一”を決める人気イベント。31回目の開催となる本大会(6・22 ディファ有明)の目玉は、初の女子試合。“和神会の女郎蜘蛛”じゅりえもん(24歳 栃木)と“反逆のタフ・スピリット”山崎桃子(21歳 横浜)の対決だ。  総合格闘技道場・和神会で実際に練習を積むじゅりえもんに対して、「格闘技経験はタイマンでの喧嘩だけ」という山崎。「喧嘩の経験値は技術レベルを凌駕できるか?」はアウトサイダーのお家芸ともいえるマッチメイクだが、初の試みとなる女子試合でも、この構図が浮き彫りとなった。 「ちらっと(じゅりえもんの)顔を見たけど『これはイケるな』って思った。女の喧嘩はテクじゃなくて根性なんで。根性あるほうが勝つと思う」と試合前の公開取材時に挑発していた山崎。それに対してじゅりえもんは「自分から喧嘩はしないけど、売られたら買うだけ」と早くも火花を散らしていた。
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「ジムでは女扱いしなかったもんな」。黒石高大と土橋政春。セコンドにつくハマの先輩2人に試合前の緊張をほぐしてもらっている山崎桃子を直撃。

 当日、試合会場に到着。客層は相変わらず戦闘力の高そうな面々ばかりで1試合目から殺気だった声援が飛び交う。会場の温度がより一層高まった頃、ついに第14試合。女子シングルマッチの選手入場となった。  和神会の猛者たちを引き連れ、女王のような貫禄で登場したじゅりえもんと、セコンドにつく“濱の狂犬”黒石高大、“ヨコハマ凌辱キング”土橋政春の2人と颯爽と登場した山崎桃子。やはりリングの上は異空間なのか、緊張した面持ちで対峙する。  試合は3分2ラウンド。ゴングと同時に、じゅりえもんが仕掛ける。柔道経験があることを裏付けるような、豪快な大外刈りから袈裟固めの体勢に。そのまま山崎を押え込みながら、「ボスッ、ボスッ」と顔面にパンチを叩き込む。  体重の乗ったパウンドとは違い、それほど威力があるわけではないが、体勢が変わらないままパンチを当て続ければ、形勢逆転は不可能と判断されて、レフェリーストップの可能性も出てくる。時間にして1分ほどか。「すわ、ストップか?」と思われた頃、山崎が振り上げた両足を大きくマットに叩きつけ、両者の体にスキマが生じた瞬間、エビ(体を九の字に曲げてエスケープする技術)で脱出。試合後「(試合前の1か月間)練習はしてたけど、喧嘩でマウント取られることはしょっちゅうだったから、それが生きた」と語っていたとおり、窮地に陥った瞬間、五感、いや体中の細胞が反応した脱出劇といったほうが正確かもしれない。  長いグラウンドの攻防が終わり、スタンディングでの打撃勝負。コンスタントに前蹴りとジャブを放ち、距離を保って優位を拡大しようとするじゅりえもん……だが、山崎の闘志に火がついたのか、ひるまずに突進し、フック気味のパンチを振り回す。これを嫌がり、じゅりえもんが再び前蹴りを放った瞬間、距離をつめて打った山崎の右拳がカウンター気味に入り、じゅりえもんの胴体を掴みテイクダウンを奪う。 ⇒【写真】はコチラ https://nikkan-spa.jp/?attachment_id=667524  マウントポジションを奪った山崎は、上から容赦のないパウンドを落とす。亀の体勢に逃げる相手の脇腹、顔を「ゴツッ、ゴツッ」と嫌な音を立てながらパンチを浴びせる。会場のボルテージが最高潮に達した頃、1ラウンド目が終了。両者の実力は拮抗。最後まで乱戦模様が続くことを予感させたが、最初のエスケープと、その後に続いた怒濤のラッシュは、山崎の体力を確実に奪っていた。2ラウンド開始してまもなく、またもやテイクダウンから袈裟固めに持ち込まれる。足をばたつかせるが、押さえ込みを振りほどく力はなく、いいように顔を殴られ続ける。そして、レフェリーの和田良覚が試合をストップ。アウトサイダー初の女子試合は、じゅりえもんが制することとなった。  試合後、控え室に向かうと、足早に会場を後にするじゅりえもんの姿が……。顔を腫らし頭を押さえながら歩く彼女にコメントを求めると、「ありがとうございます。今は、ちょっと……体調が悪いんで」と、試合の壮絶さを無言で物語っていた。
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アウトサイダー初の“不良女子対決”を制したじゅりえもん

 一方、その奥には、仲間たちに声をかけられながら、終始涙ぐむ山崎の姿が目に入った。 「気持ちは最後まで萎えてない。ゴングが鳴ってからは相手しか見えてないし、そこは街の喧嘩と一緒で。うん、それは間違いない。でも、やっぱり、体力がないから、ウチは。それが本当に悔しい。次は……勝ちます。それだけです」  両者とも言葉少なに語ったが、目の奥に光る闘志は消えていないのが印象的だった。  リングの上でぶつけ合う意地とメンツ。そこにはプロとアマチュアも、男と女も関係無いのかもしれない。まだ見ぬヤンチャ娘たちの登場を、これからも楽しみにしていきたい。 <取材・文/日刊SPA!取材班 撮影/丸山剛史>
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