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ヤンキーあがりの社長が地元の英雄から嫌われ者になったワケ

 若い頃はヤンチャをしていたヤンキーも、大人になれば社会に出て働かざるをえなくなる。暴走族やチームを率いてきたような人のなかには、その器量や人望を活かして自ら会社を立ち上げる人も少なくない。そこで、かつての仲間や後輩を雇うこともある。  地元では英雄扱いだった元ヤン社長がいる。そんな彼が会社を立ち上げてから10年余り、現在では“嫌われ者”に成り下がってしまったのだという。いったい、なぜなのか?

元ヤンから社長になった男に、かつての仲間から不満続出

ヤンキー

※画像はイメージです(以下同)

 関東某市の居酒屋で、地元出身の30代の男たち3人がクダを巻きながら、一本80円の焼き鳥をつまんでいた。 「もうね、ユウは俺たちのことを奴隷だと思っているんだよな。面倒見が良かった? そんなのは昔の話でしょ」 「ひょっとしたら“当時”から、俺たちみたいな奴隷探しをやってたんじゃねえか?」 「それは言い過ぎだけどよ(笑)、あのまんまじゃ、ユウについていくもんはいねえかんな」  彼らの不満が向けられた“ユウ”なる人物(※仮名)。彼は3人の同級生であり、小中高を共にした仲間。地元では知る人ぞ知る不良だった。面倒見がよく、後輩がヤクザに絡まれると一目散に駆けつけ、相手をボコボコにするなど、漫画から飛び出してきたような理想の“不良”。先輩後輩を問わず「ユウくん」と慕われる一面もあった。同級生の一人が言う。 「ユウは暴走族を10代でさっさと引退した後、大工に弟子入りして20代の前半で独立。会社を立ち上げたんです。出来損ないの後輩をたくさん雇ってさ。水道工事屋とか電気屋やってた不良仲間に声かけてね、会社はあっという間に大きくなった。そのうち中古車販売もやり始めて、今じゃ立派な青年実業家だな」  地元では立志伝中の人、成り上がりの人として英雄扱い。今ではX社の社長を務めるユウさんだが、その栄光に陰りが見え始めたのは東日本大震災の後からだった。

東日本大震災以降、裏では“死神”と呼ばれ…

 ユウさんは福島の復興支援事業に乗り出した。しかし、これがきっかけで身内から不満が噴出したのだ。同級生が続ける。 「福島の除染作業員の仕事があるっつうから、人探してんだっていうのさ。2012年の春頃だったっけな? まだどんだけ汚染されてるかもよくわかんねえし、そんな所に人出すんか、と。昔からユウは人の言うことを聞かなかったけども、友達とか後輩を危険な場所に送ってカネ儲けて……裏では“死神”って呼ばれてたね」  当の“ユウくん”は、本当に義理も人情もない、非情の「人夫出し」となってしまったのか。そこで連絡先を聞き、本人に電話で直撃すると……。 「そうですか……。まあ、そう思う奴には思わせておくしかありません。ここは田舎だし仕事もない。俺みたいなヤンキー上がりは、早く結婚していたり生活も大変だから。なんとかみんなに食ってもらおうとやっているだけです。文句があるなら……いや、文句があっても、働くしかない、嫁子どもに食わしてやるしかない。みんなが不満を持っているのなら申し訳ないが、社長としてやることをやるだけです」(ユウさん)  ユウさんは言葉少なにそう語った。彼とは暴走族時代からの付き合いで、現在は茨城県内で左官屋を営む中島武司さん(仮名・20代)が庇う。 「ユウさんが仕事のために見栄張ってトヨタのクラウンなんかに乗っていることが、下の人間には気にくわないんです。そんなカネあったら給料上げろって。実際ユウさんはカツカツでやっているのに。これが族時代なら、一発ぶちかませばよかったんでしょうけど、ユウさんも部下、そして部下の家族の生活を預かる身。ユウさんはとっくに不良気質を捨て、親心だけでやっているのに。下はいつまでもガキっぽさが抜けない」(中島さん)
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「黙ってついてこい」は若い頃しか通用しない
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