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ハマスという“敵”はイスラエルにとって格好の大義名分となっている

 7月17日夜、イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに2009年1月以来となる地上侵攻を開始した。「一時休戦」はしたもののすぐに戦闘は再開され、ガザの死者数は約1000人、負傷者数は6000人を超えた(7月27日付、国連発表)。なぜ停戦はなかなか成立しないのだろうか?

「日本の報道だけ見ていると、ハマスが停戦を望まないために、民間人の犠牲が拡大しているかのような論調ですが、事実は違います」

 パレスチナ問題の研究を続けてきた京都大学大学院の岡真理教授はこう指摘する。

「『停戦協議をハマスが一方的に拒否した』という報道がありました。しかしこの停戦案は、イスラエルが仲介役のエジプトと勝手に作成してハマスにつきつけたもの。ハマス代表もメディア報道でその話を知ったくらいです。ハマスが求めるガザの封鎖解除は停戦条件になっておらず、イスラエル側としては拒否は織り込み済みだったのでしょう。ガザは8年にわたり完全封鎖され、180万の住民が物資の自由な搬入・搬出・人間の自由な移動を禁じられてきました。『生きながらの死』だと人々は言います。封鎖がある限りガザの苦しみは終わりません。

 実は、ハマスは7月16日に封鎖解除を条件にイスラエルに10年間の完全停戦を申し出ています。ところがイスラエルはこれに応答せず、地上侵攻を始めました。停戦を望んでいないのはむしろイスラエル側。ハマスという“敵”の存在は、ガザの封鎖や武力攻撃を続けるための、格好の大義名分となっているのです」

 また、ガザ地区で医療支援を行っている日本国際ボランティアセンター(JVC)の今野泰三さんは「イスラエルの攻撃があまりに過剰」と話す。

「日本でも『Knock on the roof 爆撃(一度小規模な爆撃をして5分間ほどでの退避を呼びかけ、その後本格的に爆撃する)』について報道されていますが、現地スタッフによると退避時間は1分しかないなどまちまちで、逃げ遅れる人も多い。警告なしでの空爆も行われているそうです。民家をはじめ、病院や国連施設にも被害が出ています。イスラエル軍はこれを民間人に配慮した『人道的』な攻撃と喧伝していますが、犠牲者の4分の3は民間人。

イスラエルのガザ侵攻理由の一つとなっているハマスのロケット攻撃。しかしそのほとんどは、イスラエルの最新鋭防空システムに阻まれている

 またイスラエルは『ハマスがロケット攻撃を止めるまで攻撃を続ける』と表明しています。しかし実は、最新鋭のアイアンドーム(対ロケット防空システム)に守られてロケットはほとんどイスラエル側に届かず、被害は圧倒的に少ない。戦場は、さながらイスラエル製兵器の性能を世界に宣伝する“武器見本市”のようです。現場で見る実態は、『イスラエルとパレスチナの“報復の連鎖”』といった対等なものではなく、圧倒的な戦力を持ったイスラエルが、封鎖されたガザ地区へ一方的に攻撃を続けているという構図なのです」

 7月29日発売の週刊SPA!「今週の顔」では、“人道的空爆”のもと子供たちが無差別に殺され、水・食料・医薬品も“完全封鎖されたパレスチナ自治区ガザの現状をリポート。そのほか、いま注目の事件、人物などの話題が満載。

<取材・文/白川 徹>

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