女性の永田町進出が進まないのはなぜ?【日本に女性首相が誕生しない理由】vol.4
第2次安倍改造内閣が肝煎りで推し進めていた「女性活躍推進法案」も、突如、永田町で巻き起こった“解散風”に吹き飛ばされそうな気配である……。
そもそも、政権の目玉だった小渕優子元経産相&松島みどり元法相のW辞任がミソの付き始めだったが、これで、「女性の輝く社会」実現がさらに遠のくのは必至。
特に、血筋、地盤ともに申し分なく、「日本初の女性総理」候補と目されていた小渕氏に至っては、すでに東京地検特捜部の強制捜査も入っていることもあり、次期総選挙出馬も覚束ない有様だ。これで、たびたび湧き上がる“女性宰相待望論”も鳴りを潜めてしまうのか?
そこで、女性議員の政策秘書、選挙対策を行った経験のある、国会議員政策担当秘書の松井雅博氏が「日本に女性首相が誕生しない理由」について寄稿した。
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◆女性首相はいつ生まれる? 女性の永田町進出が進まない理由
では、この状況はどうあるべきなのか? たとえば、よくある議論が「クォーター制度」の導入である。たとえば国会議員の一定の枠を女性枠に定めることで、女性議員を強制的に作り出す手法である。筆者の個人的な意見を言えば、クォーター制度の導入には慎重だ。
もし、これが「性別」ではなく他のファクターだったとしたらどうだろうか。日本国憲法第14条1項には「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と書かれており、いかなる場合においても国会議員になるための要件に「性別」を加えることは許されないと思う。
今の有権者の投票行動を見ても、有権者自身が「女性」という性別を根拠に国会議員を選ぶことに賛成しているようには感じない。
まず、男女に関係なく、政治の世界は新規参入が難しい世界であり、新人の当選率が極めて低いことが問題である。
その要因として公職選挙法のわかりにくさがある。松島みどり元法務大臣の辞任の原因となった「チラシかウチワか」論争のような形式的な部分を議論しても意味が無い。うちわをもらって大喜びする人はあまりいないわけで、「何が違反なのか」をもっと明確に決めないと、新人候補は混乱してしまうだろう。多くの現職議員が今のやり方で慣れててしまっているため、公選法を変えない方が無難だという考えが改正を先延ばしにしているのではないか。
結局、曖昧な規定だと、地域によって異なるルールが生まれる。地域の警察、検察、選管によって判断が異なる結果となる。
悪意をもって違反している人が「知りませんでした」と逃れ、新しく政治の世界に入る人が違反で罰せられることも少なくない。
もともと、自由だった選挙活動に厳しい規制がかけられたのは、1925年の普通選挙法制定の時である。納税要件が撤廃され、満25歳以上のすべての成人男子に選挙権を、満30歳以上のすべての成人男子に被選挙権を与える代わりに、ルールを複雑化させて参入障壁を設けたとも言える。この厳しい規制を利用して、政友会と憲政党が相手の候補者を叩き落とすための政局の道具にしたという歴史がある。
次に、選挙制度が「候補者個人の資質」よりも「政党名」が強く寄与する仕組みになっていることが挙げられる。
小選挙区制度であれば、有権者の多くは個人よりも政党を選ぶ傾向が強い。また、中・大選挙区であったとしても、「票割れ」しないように同一政党内で候補者調整が行われるし、比例代表制度も結局は政党への支持率が大事であって、人物自体を評価したり、有権者が選ぶ仕組みは不完全である。
最後に、そもそも女性の政治家志願者が少ないという現実もある。
まだまだ女性の中で政治リーダーを目指す者が少ないことに加え、「子育て」などの既存の女性像に関わる特定の課題にしか関心が無く、財政問題や地方分権、外交や防衛、農業やエネルギーといった幅広い国家課題に対応できる女性人材が乏しいことも起因している。
女性の社会進出に対して保守的な男性側が考え方を改めることは当然だが、女性側も考え方を変える必要があるだろう。
この状況を打開するためには、単に「女性」という性別に着目して数合わせをするのではなく、国会議員にふさわしい優秀な女性候補者を発掘し、育てることが大切である。
そのためには、公職選挙法を改正し、わかりやすい選挙の仕組みを実現することで、政治の世界への新規参入を促すことが大切だ。
また、クォーター制を導入するならば、参議院に導入するのは一つの手かもしれない。今、参議院は衆議院の「カーボンコピー」と呼ばれ、その役割にほとんど差はなく、チェック機関としての体をなしていない。参議院にクォーター制を導入すれば、衆議院との差異を出すことができるだろう。
そして、もっと女性の政治リーダーが生まれた際の環境整備を真剣に考えるべきである。女性議員の数が今よりもっと多くなった場合、出産を理由に欠員が生じた際の議決に与える影響も大きくなるということである。緊急時には議員の議決権を委譲できる制度を整備するなどの対応が必要である。
政府は、指導者層の30%を女性にする、という数値目標を掲げているが、数合わせでは意味がない。
男女平等とは男女の性差を無くすことではない。社会で働きたいと「性別」を根拠にするのではなく、「能力」のあるリーダーが現れることを有権者は何より願っている。
最後に、そんな筆者も永田町で花嫁募集中の身であることを付け加えておこう。
ただし、政策秘書が「産休をとりたい」と言おうものなら、一瞬でクビである。
<構成/日刊SPA!編集部>
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