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元フジ女子アナ・平井理央の“聞く力” 「愛情と誠実さが本音を語ってもらう第一歩」

元フジテレビアナウンサーで現在フリーの平井理央が、自身初のエッセイ『楽しく、走る。』(新潮社)を5月30日に上梓した。昨年完走した米NYCマラソンや、挑戦を決めてからの約1年にわたる過程などを綴った一冊だ。ランニングのみならず、フジテレビ時代のインタビュー術についてもあれこれ話を聞いた。

平井理央

平井理央

――『すぽると!』(フジテレビ系)のキャスター時代から、人の話を引き出すうえで気をつけていることはありますか?

平井理央(以下、平井):一番に心がけていたのは、やっぱり相手の話を聞くこと、かつ表情を見ることですね。もちろんインタビューのときはどういう話を聞きたい、こういう言葉がほしい、という気持ちはあるんですけど、それ以上に相手がどういうことを語るのか、何を話したときにその人の表情がいきいきするのかを気をつけて見て、「あ、今この話題を話したいのかな?」と思ったら、その話について掘り下げて聞くことを意識していました。

――その場で考えながら、聞きたいことを柔軟に変えるんですね。

平井:脱線することもありますよ。でも意外と、そういう時にこそ思いもかけない言葉を聞けるんじゃないかなと。わたしはインタビューの相手をその瞬間ものすごく好きになっちゃうんですね。「この人の話もっと聞きたい!」という思いが伝わると、インタビューがスムーズに進むことが多かった気がします。

――スポーツ選手にインタビューをした中で、これは印象に残っているというエピソードを聞かせてください。

平井:2008年の北京オリンピック前の、上原浩治さんのインタビューは忘れられないですね。上原さんの口から初めて「引退も考えてる」という言葉が出てきて。そのとき、わたし自身は引退について突っ込めなかったんです。「引退」という言葉が出たら、聞き手としてはそのことを聞かなきゃいけなかったと思うんですけど、自分にはそれができなくて。こちらが言葉を失っていたら、そのあと上原さんから「そのくらいのターニングポイントに今いると思ってる」というお話を聞けたんです。

 当時、上原さんは赤裸々に語って、思ってたことを全部出したからスッキリしたということを4年後くらいに話してくださって、一人の人生のターニングポイントに立ち会えたというか、その場にいられたことが忘れられない経験になりましたね。振り返ってみるとインタビューを通じて、スポーツ選手の言葉や生きる姿勢に励まされ続けてフジテレビ時代を過ごしました。

――スポーツ選手から本音を聞くためには、時にシビアな質問をぶつけなければならない場面もあったのではないでしょうか?

平井:ただ厳しい質問をしたからといって本音で答えてくれるかというと、そうじゃないと思うんです。相手を尊敬して、愛情と誠実な気持ちでお話を伺う、その気持ちを伝えることが本音を語っていただく第一歩だと思ってやっていましたね。

――写真家・若木信吾さんとの対談で「人を撮ることと、人から聞くことは似ているのかもしれない」と感じたという著書の一文が印象に残っています。

平井:雑誌『BRUTUS』の取材で、若木さんから「お互いのポートレートを撮り合おう」という提案をいただいて。そのあとお話を伺ったら、ポートレートを撮る前は相手のいい表情をいかに引き出すか、どうやったらその人が一番構えない、リラックスした魅力的な表情に出会えるのかということを考えて、カメラのセッティングや場の雰囲気づくりをしているとお聞きしたんです。

 わたしはアナウンサー時代からインタビューが一番好きで、どうやったら相手が心を開いて、いい表情でいい言葉を話してくれるかなということを一番に考えてインタビューに臨んでいたんです。そのお話を伺ったときに僭越ながら「あっ、すごく似てるな」と思って。もう一歩踏み込んで、もし自分がインタビューしながらポートレートも撮れたら、いい言葉といい表情を自分で聞いて写すことができたら楽しそうだなと思って、それから写真に興味を持ちました。

 人のどういう表情が自分は魅力的だと思うのか、笑顔なのか、強い眼差しなのか、どこを切り取ったら魅力的に見えるかを考えながらお会いするのが楽しくて、これからも写真は続けていきたいなと思っています。

――最後に、平井さんにとって「スポーツ」とは?

平井:人生の楽しみのひとつですね。中学、高校とバレーボールをやっていたので大好きでよく観戦していたんですけど、正直、野球やサッカーはあんまりルールも詳しくなかったんです。スポーツ番組に就いていろんな取材させていただいて、勉強したことで観たら楽しいものがいっぱい増えて、会社で人生の楽しみを教えてもらえるなんて幸せですよね。マラソンに関しても一生続けていける楽しいスポーツがひとつ増えました。大げさにいえば、そういう出会いひとつひとつが、人生の財産なのかもしれませんね。

楽しく、走る。【平井理央(ひらい りお)】
1982年生まれ。慶應義塾大学卒業後、’05年フジテレビ入社。『すぽると!』キャスター等、スポーツ報道に携わり、’08年北京五輪、’10年バンクーバー五輪等、国際大会の現地中継も担当。’09年に番組内の企画で東京マラソンに出場し、4時間57分22秒で完走。’13年よりフリー。’14年、二度目のフルマラソンとなるNYCマラソンに出場、6時間1分24秒で完走した。著書『楽しく、走る。』(新潮社)が発売中

<取材・文/北村篤裕>

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