ファッションも哲学も簡単に伝わらなければ意味がない――ファッションバイヤーMB×哲学ナビゲーター原田まりる
世の中にはさまざまな哲学があるように、ファッションにも哲学は存在する。そこで、日刊SPA!でも連載中のファッションバイヤーMBとコラムニストで哲学ナビゲーターの原田まりるの異色の対談を実現した。原田さんは先日、哲学エンターテイメント小説『ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。』(ダイアモンド社)を上梓したばかり。お互いに専門分野に対してどう切り込んでいくのか――。
原田:今日はお会いできて本当にうれしいです!
MB:読者の方からすると、「なんでこの2人が対談を?」という取り合わせかもしれませんね(笑)。簡単に僕らは以前からネット上でやりとりしていて、今回初めてリアルでお会いすることになったわけですけれども……。最初に、原田さんが僕のことを知ってくださったのって、いつなんですか?
原田:前々から、うちの母が実はMBさんのファンで。ずっとメルマガを購読してるんです。そのメルマガや著書を読んでいくなかで、僭越ながら「あぁ、MBさんも私と考え方が似ているな」って思うことが多かったんです。そこで、今回私が新刊を出すにあたって、ぜひMBさんと対談させていただきたいと思いまして。
MB:そうなんですね、ありがとうございます。今回の対談にあたって、僕もさっそく原田さんの新刊を読ませていただいたんですけど、「僕とアプローチが似ているな」って思いました。
原田:光栄です。どのあたりがですか?
MB:わからないものを、わかりやすく、かみ砕いて伝える……というところですね。正直、僕は哲学に対して、すごく無知な人間だったんですよ。「哲学=強烈にわかりにくいもの」という印象も強くて。でも、この本は表紙からしてすごく読者が入りやすくなっているし、内容も小説という形を取っているせいか、とても読みやすかったです。
原田:そういっていただけると、すごくうれしいです。
MB:僕自身も、ファッションというわかりにくいところを、コラムだけではなく、本や漫画という形でも見せようとしていて、「ファッションは難しい」とか「ファッションに興味がない」という人にも、読んでもらえたらなって思っているんですが、そのあたりのアプローチがとても似ているな……と。
原田:ファッションもそうかもしれませんが、哲学はすごく概念付けされていて、専門用語も多い。だからつい読みづらくなってしまうんです。私自身、この本を書いた理由のひとつとしては、「哲学をもっと多くの人に知ってもらいたいな」と思ったからなんですよ。
MB:というと?
原田:よく「中学生でもわかる哲学の入門書」みたいなものってありますよね。でも、やっぱり中学生が読んでも難しすぎてわからない。大学生が読んでも難しいと思うんです。代表的なものに、昔流行した『ソフィーの世界』みたいなものもありますが、あれを読んでも「やっぱり難しいよね」という意見をいくつか聞いて。
MB:たしかにそうですね。「簡単な哲学書」と言われても、やっぱり難しいものが多いですよね……。
原田:だから、すでにあるものよりも、より簡単に、より簡潔に表現した哲学書を書いてみたかったんです。
MB:哲学書って、いままで「わかる人にわかればいい」というか少し突き放した感じがしたんですけど、この本はすごく読者に寄り添って書かれていますよね。まず、主人公がまったく哲学を知らない女子高生で、そんな彼女のもとに「ニーチェ」を名乗る男性が現れて、哲学を教えてくれる。すごくわかりやすくて、僕みたいに哲学に疎い人間でも、哲学ってどういうものなのかがわかったような気がしました。
原田:そうなんです!この本は「人生を哲学の糧にする」ことではなく「哲学を人生の糧にする」ことを意識して書き上げました。
MB:この本でも主人公の女子高生であるアリサが、日常に哲学の考え方を入れていくことで、生活がどんどん変わっていきますよね。それがすごくよかったです。哲学って、実は有益なものなんだってことが、すごく伝わってきました。
難しいと思われている分野をどう噛み砕いて伝えていくか
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