同じ目標を持つ集団――連続投資小説「おかねのかみさま」
みなさまこんにゃちは大川です。
『おかねのかみさま』66回めです。
もうすぐ1周年、六本木SLOW PLAYで書いてます。
※⇒前回「巨悪」
〈登場人物紹介〉
健太(健) 平凡な大学生。神様に師事しながら世界の仕組みを学んでいる
神様(神) お金の世界の法則と矛盾に精通。B級グルメへの造詣も深い
死神(死) 浮き沈みの激しくなった人間のそばに現れる。謙虚かつ無邪気
美琴(美) 普通の幸せに憧れるAラン女子大生。死神の出現に不安を募らせる
村田(村) 健太が師と崇めるノウサギ経済大学の先輩。元出版社勤務
ママ(マ) 蒲田のスナック「座礁」のママ。直球な物言いが信条
学長(学) 名前の由来は「学長になってもおかしくない歳のオッサン」の略
杉ちゃん(杉) ITベンチャー社長。ヒットアプリ「アリファン」を運営
沼貝(沼) 杉ちゃんの先輩ベンチャー経営者で株主。脅迫事件の対処に勇躍
〈第66回 同じ目標〉
蒲田スナック・座礁
マ「確かになかったわね。ウチもなんかお客さん増えるようなことしたほうがいいのかしら」
村「たとえば?」
マ「んー、そうねぇ。若い子雇うとか」
村「若い子ねぇ…若いだけの子がいないのがこの店のいいところなんじゃねぇかなぁ」
マ「褒められてる…わよね?」
村「あぁ。褒めてる。なんつーか、今の世の中どこにいっても『こういうの用意しといたらこんな層のカスタマーはお金払うでしょ』みたいなもんばっかりだからな。だからこの店みたいに、川底に成り行きが積み重なったみたいな店は少なくなった。昔はいろいろあったんだよ。定食屋にしても飲み屋にしても、気前の良さだけで乗り越えちゃってるような店が。だけど減ったな。特に東京ではめったに見なくなった。この店も気前が良いってわけじゃないけど、なんつーか、店主の意図がない空間ってのがいつの間にか貴重になっちまったケースだな。あれだ。イワシが高級魚になっちまうみたいな。」
マ「あ、ありがとう…」
村「おう…」
学「こんばんみー」
マ「学長!いらっしゃーい!」
村「お、じじい。ご機嫌じゃねぇか。米寿か?」
学「いやいやいやいや。いいことあったんだなー。むかーーーし投資した会社が上場することになりそうなんじゃ」
村「なんだと?」
学「という夢を見たんじゃ……」
村「そうか。そりゃよかった」
学「でもな、いいところまで行った投資案件はあったんじゃよ。ワシの場合、大学だから研究に協力しちゃうって言えば一番早い段階で会社に参加したりするじゃろ。だいたい20社に1社くらいはいいところまでいく。ひとつも上場はしてないんだけどな」
村「いいところまでいくことになんか意味はあるのか?」
学「またがんばろうって気になれるじゃろ。あとは、一緒にやった仲間たちと【あー…】って言うのも楽しいもんじゃ」
村「【あー…】な。確かに突然全員が金持ちになるよりも、一緒に【あー…】のほうがたのしいこともあるな」
マ「学長、なに飲む?」
学「ドンペリ」
マ「鏡月ね」
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