更新日:2023年03月21日 16:17
カーライフ

一部を除き釜石まで開通した三陸道、震災復興でも話題にならないので実際に走ってみたところ…

 仙台から宮古まで、一部を除いてほぼ開通した三陸自動車道を辿る旅。つい先日、三陸鉄道リアス線が全線開通したときは全国ニュースになったが、高速道路のほうはさっぱりニュースにならないので、こうして高速道路マニアが細々とお伝えしております!  前回は、津波により廃線状態となったJR気仙沼線(BRTが代行運転中)の遺構を目にして、しんみりしたところまで書きました。

三陸道

 三陸道は気仙沼市の手前で再び途切れ、国道45号線バイパスに合流する。せっかくなので市内に入ってみると、道路は各所で工事中。デコボコが多く、かなり混雑している。三陸道ができれば、市内を海側の橋など(合計延長7.3km)によってバイパスできるようになり、混雑も緩和されるだろう。国道に戻って数km進むと、三陸道が復活。間もなく陸前高田市に入る。

岩手県最多の死者・行方不明者を出した陸前高田は今

 陸前高田は、震災直後のGW、地元出身の方をクルマで実家へ送りがてら、避難所に自動車誌などの読み物を届けた場所だ。当時は三陸道などほぼ影も形もなかったので、東北道の一関ICから国道でアクセスしました。

震災直後に訪れた陸前高田

 あの時、市街地はすべてが瓦礫の平原。陸前高田市の死者・行方不明者数は、岩手県内最多(約2000人)に及んだ。なのに、そこに漂っていた驚くほどの静謐さと清潔感、そして被災者の皆さんのあったかさ! 悲嘆を内に秘め、つらくても笑顔を見せる日本人の国民性のすばらしさを思い知った。  現在の陸前高田旧中心部は、ほぼ更地状態で、地盤のかさ上げ工事が続いている。

陸前高田旧中心部

 震災遺構を除けば建物はほとんどない。草木もない。「奇跡の一本松駐車場」にクルマを止めて、一本マッ茶ソフトクリーム(税込み400円)をいただきました。おいしゅうございました。

一本マッ茶ソフトは、大変おいしゅうございました!

 三陸道に戻って北上を続ける。目的地は、今年開催されるラグビーワールドカップ会場のひとつ、釜石鵜住居(うのすみか)復興スタジアムだ。三陸道は常に海岸よりやや内陸側を走るため、震災遺構はほとんど見えないが、たまに垣間見える海岸線には、例外なく高い防潮堤が築かれつつある。美しかった海岸線がコンクリートで覆い尽くされ、景観はどこも台無しだ。だが、造らないわけにもいかない。しかし、これでもう大丈夫かと言えばリスクが減っただけ。何が正しいのか答えは出ない。

奇跡の一本松

 複雑な思いを抱えつつ、片側1車線対面通行の三陸道を北上し、再び一旦終点となる釜石北ICに到着。ここから先の4.8kmは1年後に開通予定で、現在はまだ途切れているのだ。ラグビーワールドカップが開催されるスタジアムは、ICのほど近く、釜石市の中心部から北に5kmほどの大槌湾に面したところにある。
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東北道の最高速度120km区間を走る
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1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中

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